姫金魚草
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カテゴリー「恋戦記・魏」の記事一覧
- 2024.11.25 [PR]
- 2010.05.09 孤独の神 (孟徳)(鳥篭ED後)
- 2010.05.05 あなたの幸せを願う (孟徳)
- 2010.04.27 キストキメキと。 (孟徳)
- 2010.04.26 源氏の夢 (花孔明in魏)
- 2010.04.21 処女の祈り (孟徳)
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あなたの幸せを願う (孟徳)
戦支度を整えた男を見るときはいつも、胸が痛んだ。
無表情の男の手甲を、せめてもの想いの現われとして丁寧に結ぶ。彼を守って欲しいという想いを込めて。
「……ごめんね。悲しい顔をさせてしまう」
「いえ」
御武運を、と、震える声で囁く。負けるはずのない戦だということを、知っていた。けれど震えた声に、彼は何を見ただろうか。苦笑が深くなるのを見る。
「ごめんね」
彼はそれ以外を口にしなかった。仕方の無いことだとも、望んでやっているわけではないとも、何一つ。全てがただの言い訳に過ぎないことを知っているからかもしれないし、そうでなくても彼は何も言わないかもしれないとも思った。多弁で、けれど、自分の為の言葉は、口に出せない人なのだと、もう、知っていた。
ゆっくりと首を振って、祈るように男の左手をとった。消えることのない火傷痕を、包み込むように。
「悲しく、ありません」
嘘をついた。嘘だとわかられることを知っていて、嘘をついて、笑った。男が傷付いたように眉を歪めるのを見て、言葉を重ねた。
嘘ではない、言葉を。
「私は、自分で選んだんですから」
選ぶということは、捨てるということだ。
噛み締めるように思って、男を見つめた。男は僅かに目を見開いて――やはり、なにか痛みを堪えるように、目を眇めた。痛みから逃れられないことは、知っていた。花はこの痛みから――この哀しみから、苦しみから、逃れることはできないだろうし、そうすれば男もまた、花を思って心を痛めるだろう。
男が、どんな痛みも取り除きたいと思ってくれていることを、知っていた。申し訳ない、と思うけれど、同時に、抱えなければいけない痛みだ、と思った。
(彼を、想うことに決めた)
(彼の幸せを、願うことに、決めた)
それはどうしても、彼以外の幸せを願わないということに、なってしまうのだ。
「……ごめんね」
三度目の言葉は、優しかった。宥めるように落とされた唇と共に、男は囁いた。せめて安らかであれ、と、祈るような言葉に、すこし、涙が出た。
(蜀との決戦前のイメージで。)
(「君にはそんな選択をしたと、自覚して欲しくなかったんだけどなぁ」)
無表情の男の手甲を、せめてもの想いの現われとして丁寧に結ぶ。彼を守って欲しいという想いを込めて。
「……ごめんね。悲しい顔をさせてしまう」
「いえ」
御武運を、と、震える声で囁く。負けるはずのない戦だということを、知っていた。けれど震えた声に、彼は何を見ただろうか。苦笑が深くなるのを見る。
「ごめんね」
彼はそれ以外を口にしなかった。仕方の無いことだとも、望んでやっているわけではないとも、何一つ。全てがただの言い訳に過ぎないことを知っているからかもしれないし、そうでなくても彼は何も言わないかもしれないとも思った。多弁で、けれど、自分の為の言葉は、口に出せない人なのだと、もう、知っていた。
ゆっくりと首を振って、祈るように男の左手をとった。消えることのない火傷痕を、包み込むように。
「悲しく、ありません」
嘘をついた。嘘だとわかられることを知っていて、嘘をついて、笑った。男が傷付いたように眉を歪めるのを見て、言葉を重ねた。
嘘ではない、言葉を。
「私は、自分で選んだんですから」
選ぶということは、捨てるということだ。
噛み締めるように思って、男を見つめた。男は僅かに目を見開いて――やはり、なにか痛みを堪えるように、目を眇めた。痛みから逃れられないことは、知っていた。花はこの痛みから――この哀しみから、苦しみから、逃れることはできないだろうし、そうすれば男もまた、花を思って心を痛めるだろう。
男が、どんな痛みも取り除きたいと思ってくれていることを、知っていた。申し訳ない、と思うけれど、同時に、抱えなければいけない痛みだ、と思った。
(彼を、想うことに決めた)
(彼の幸せを、願うことに、決めた)
それはどうしても、彼以外の幸せを願わないということに、なってしまうのだ。
「……ごめんね」
三度目の言葉は、優しかった。宥めるように落とされた唇と共に、男は囁いた。せめて安らかであれ、と、祈るような言葉に、すこし、涙が出た。
(蜀との決戦前のイメージで。)
(「君にはそんな選択をしたと、自覚して欲しくなかったんだけどなぁ」)
キストキメキと。 (孟徳)
朝方部屋を訪れた男は、寝起きの花が慌てるのも気にせずにその腕に花を抱え込んで、以来ろくに何を喋るでもなく、花の額となく頬となく唇となく、どこか眠たげな風情のままに、柔らかく唇を落としていた。
寝起きを襲われたに近い花は反駁のタイミングを失って、こちらもまだ眠たいこともあり、自然とされるがままになってしまう。恐らく孟徳は眠らず朝を迎えたのであり、こんな風に疲れた風情の彼が甘えてくることがそう珍しいことではないことを、花はすっかり学習していた。
(……とは、言っても)
(今日はちょっと、長いなぁ……)
いつもならば疾うに、そのまま寝台に倒れて、眠ってしまっている頃である。花のほうはそろそろ覚醒してきて、触れてくる唇がくすぐったいやら恥ずかしいやらで、身の置き所に困り始めていた。
「……、孟徳さん?」
「んー?」
「くすぐったいですよ」
「んー」
聞いているのか居ないのか、半分瞼の落ちた瞳をこちらに向ける。可愛らしいとすら言える顔にすこし笑って、花はやわらかな髪を撫でるように手を添わせた。
「孟徳さん。……そんなにしたら駄目ですよ」
「……なんで」
声もまた半ば眠っている。孟徳がよくせがむ御伽噺を語る口調で、花はゆっくりと答えた。
「口付けには、場所によって意味があるんですよ。そんなにたくさんしたら、どの意味だかわからなくなっちゃいます」
「……いみ、」
「はい」
とろんとした目が花を見る。花はゆっくりと、子供をあやすように孟徳の額に唇を落とした。
「額へは、友情の」
続けて、瞼へ。
「瞼は、憧れ」
なるべく唇を離さずに、添わすように下ろしていく。
「頬は、思いやりの」
孟徳の瞼が落ちていく。力の抜けかけた手をとって。
「手の甲は、尊敬。掌は、懇願」
昔――今はもう遠い世界の恋多き友人が、憧れるように語ってくれたそれを思い出しながら。
「手首は――欲望」
すっかり瞼を閉じた男には、もう聞こえていないだろうと、そんなことまで。
そうして勿論、最後には――
「ここはまた、起きたときに。おやすみなさい、孟徳さん」
すっかり寝息に変わった息を掠め取るように口付けて――花はゆっくりと、やさしく笑う。
友情。憧憬。尊敬。懇願。欲望。――愛情。
この身に抱く全ての想いを、叶うなら貴方に捧げたい。
孟徳の身体にそっと毛布をかけながら――それは甘い、甘い朝の出来事だった。
(丞相は欲張りでした……)
(リクエストを貰っておきながら書かないという所業。明日から頑張ります……)
(1キャラいくつでも書こうと思うので、丞相リクエストもまだお待ちしております。)
寝起きを襲われたに近い花は反駁のタイミングを失って、こちらもまだ眠たいこともあり、自然とされるがままになってしまう。恐らく孟徳は眠らず朝を迎えたのであり、こんな風に疲れた風情の彼が甘えてくることがそう珍しいことではないことを、花はすっかり学習していた。
(……とは、言っても)
(今日はちょっと、長いなぁ……)
いつもならば疾うに、そのまま寝台に倒れて、眠ってしまっている頃である。花のほうはそろそろ覚醒してきて、触れてくる唇がくすぐったいやら恥ずかしいやらで、身の置き所に困り始めていた。
「……、孟徳さん?」
「んー?」
「くすぐったいですよ」
「んー」
聞いているのか居ないのか、半分瞼の落ちた瞳をこちらに向ける。可愛らしいとすら言える顔にすこし笑って、花はやわらかな髪を撫でるように手を添わせた。
「孟徳さん。……そんなにしたら駄目ですよ」
「……なんで」
声もまた半ば眠っている。孟徳がよくせがむ御伽噺を語る口調で、花はゆっくりと答えた。
「口付けには、場所によって意味があるんですよ。そんなにたくさんしたら、どの意味だかわからなくなっちゃいます」
「……いみ、」
「はい」
とろんとした目が花を見る。花はゆっくりと、子供をあやすように孟徳の額に唇を落とした。
「額へは、友情の」
続けて、瞼へ。
「瞼は、憧れ」
なるべく唇を離さずに、添わすように下ろしていく。
「頬は、思いやりの」
孟徳の瞼が落ちていく。力の抜けかけた手をとって。
「手の甲は、尊敬。掌は、懇願」
昔――今はもう遠い世界の恋多き友人が、憧れるように語ってくれたそれを思い出しながら。
「手首は――欲望」
すっかり瞼を閉じた男には、もう聞こえていないだろうと、そんなことまで。
そうして勿論、最後には――
「ここはまた、起きたときに。おやすみなさい、孟徳さん」
すっかり寝息に変わった息を掠め取るように口付けて――花はゆっくりと、やさしく笑う。
友情。憧憬。尊敬。懇願。欲望。――愛情。
この身に抱く全ての想いを、叶うなら貴方に捧げたい。
孟徳の身体にそっと毛布をかけながら――それは甘い、甘い朝の出来事だった。
(丞相は欲張りでした……)
(リクエストを貰っておきながら書かないという所業。明日から頑張ります……)
(1キャラいくつでも書こうと思うので、丞相リクエストもまだお待ちしております。)