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孫家の流儀 (仲謀)

里帰りとはいいものだ。
益州の地にとって玄徳軍は新参者だし、花もまた、益州の地をよく知るわけではない。
けれど、玄徳軍は。
この世界を訪れた花を、てらいなく受け入れてくれた玄徳をはじめとする、玄徳軍は――花にとって、この世界での故郷ともいうべき場所だった。
そして故郷というのは、何とも居心地がいいものだ――懐かしい顔と共に過ごす三月はあっという間に過ぎて、そろそろ逢いたい顔が日増しにちらつくようになってきた、そんな頃。

「それにしても、よくあの男が許したわね? こんな長期間」
自分で作った菓子を摘みながら、芙蓉姫が首を傾けた。
「……」
花は思わず苦笑する。あの男――とは、勿論、仲謀のことだろう。芙蓉姫の中では、仲謀は――花が最初に思っていたのと同じ、いけすかない俺様男、という分類になっているらしい。
「仲謀は、優しいよ」
小さく、庇ってみる。しかし、芙蓉姫はより嫌そうに顔を顰めた。
「懐柔されてる。……あーあ、ずっとここにいればいいのに」
ふてくされたように言う芙蓉姫がかわいらしくて、花は少し笑ってしまった。姿勢悪く卓に顔を乗せているさまが、昔――元の世界で友人とおしゃべりをしていたときの感覚を思い出させて、思わず芙蓉姫の頭に手が伸びた。
よしよし。
「ごめんね」
「……もう。なんだかすっかり、大人っぽくなっちゃって」
芙蓉姫は恨みがましい目をこちらに向けてから、ふふ、と笑った。
「嘘よ。ほんとは、嬉しいの。嬉しいけど、なんだか悔しくて」
「?」
「花が、幸せそうで」
芙蓉姫がなんだか、とても子供のような顔をしている、と思った。花は少し沈黙した後、うん、と、頷いた。
「うん、……しあわせだよ」
芙蓉姫が体を起こして、花が先程したように、花の頭に手を伸ばしてくる。
ぐりぐり、と力任せに頭を撫でられて、確かに私はしあわせだな、と、そんな事を思った。


「すみません、お邪魔してもいいですか?」
二杯目のお茶を入れたところで、扉を叩く音と、控えめな声が響いた。
「尚香さん! 勿論、どうぞ」
「お邪魔します」
華やかな笑顔と共に、孫家の象徴のような金髪とふわふわの服を輝かせて、尚香が姿を見せる。
「お久しぶりです、花さん。お元気そうで、なによりです」
「こちらこそ、お久しぶりです。お菓子があるんですよ。今、お茶を入れますね」
「すみません」
椅子をもう一つ並べて、茶器を用意する。芙蓉姫と尚香はすっかり打ち解けているらしく、「これ、この間頂いたお菓子ですよね。すごく美味しかったです」等と、可愛らしく言葉を交わしている。なんだかとても華やかだなぁ、と思いながら、茶器を尚香の前に置いた。
「いただきます。……それにしても、よく兄が許しましたね」
今度は、流石に噴出してしまった。
「?」
不思議そうな尚香の隣で、芙蓉姫もけらけらと笑う。
「それね、さっき、私も同じこと言ったの」
「え、そうなんですか。でも、不思議なんですもの。兄は、我侭なところのある人ですから」
「妹からもこの評価……、……ほんとに花をお嫁にやっていいのかしら」
「! いえ、勿論、いいところもたくさんありますから!」
慌てる尚香に笑ってしまう。
「でもね……やっぱり、ずっとここにいればいいのに、って思っちゃうわ」
芙蓉姫が先程よりは随分冗談めかして、同じことを言う。妹を嫁にやりたくない気分? と首を傾げるのに笑っていると、尚香がふと真顔になった。
「それは、だめです」
「……?」
勿論冗談よ、と芙蓉姫が笑って言う前に、尚香はごく真面目な顔で言った。

「嫁盗りは、孫家の流儀ですから。兄がここまで、花さんを奪いに来てしまいますわ」

「……へ?」
花と芙蓉姫が、ふたりで同じように目を瞬く。
その前で、尚香は真面目腐った顔のまま続ける。
「上の兄――伯符兄上が言っていたんです。欲しい女は、攫ってでも手に入れろって。……ふふ、伯符兄上は、実際二喬を攫ってきたことがありますから」
「……孫家って、過激なのねぇ」
「だから、あんまりこっちに長くいるようだと、痺れを切らしてしまうかもしれません」
そんなまさか――花が笑おうとしたところで、ばたばたばた、と、非常に慌てた足音が部屋に近付いてくるのが聞こえた。

まさか。

思いは三人一緒だっただろう。失礼します! という声も、足音と同じく慌てていた。
「はーい?」
「すみません、あの、……」
今度は戸惑うように口ごもっている。何事だろうと思いながら、扉に近付く、と。

扉は、花が開ける前に、開かれた。

「……ったく。どんだけ里帰りしてるつもりなんだ、お前は」
「……!」

あからさまに苛立った顔で、――僅かに疲れを見せる顔で、仲謀が、立っていた。

「精々一月だろうと思ってりゃ……お前今がいつだか言ってみろ、こら」
「……え、と」
後ろで、許可取ってたわけじゃなかったのねぇ、と、不釣合いにのんびりした芙蓉姫の声が響くのが、居た堪れない。
「ごめんなさい。……そろそろね、帰ろうと」
「――」
これは本心だ。なにより――仲謀の顔を見てどうしようもなく高鳴った胸が、正直だ。
逢ってしまえば、どうして三月も離れていられたのかもわからない。
花の顔を見下ろした仲謀は、僅かに目を眇めたあと――花の手をとった。
「なら構わねぇな。――帰るぞ」
「うん。……って、え? い、今すぐ!? 挨拶、とか」
「こっちは子敬に無理言って来てんだよ、んな時間あるが」
「え、ええー!?」
子敬に許可を取ってきただけ偉いんです、花さん、と、これまた背後から聞こえてきた呟きに――花は少し納得した。……疲れた顔を、しているはずだ。
思わず、手を握る。
「……ごめんね」
「わかりゃいい。……ったく、戻ってこねぇんじゃねぇかと」
「帰るよ」
仲謀の言葉を遮るように、花ははっきりと言った。

「ちゃんと帰るよ。私の帰る場所は、――仲謀の、いるところだもん」

思わず、と言うように振り返った仲謀の顔が、なんだか赤い。
「……改めて言わなくたっていいんだよ! ……っとにお前は……」
ぐっ、と、手を強く引かれた。照れ隠しだ。なにか変な事を言ったかな――思いながら、花は、なるほどこれが孫家の流儀か――と、奇妙に納得するような気分だった。













(よく子敬が許したなぁ)

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Amazonの予約特典CDで、仲謀の母親が、文台も両親に結婚を反対されて、家に乗り込んで来て、母親を連れ去った、みたいな事を言っていましたし、やっぱりこれは孫家の流儀で決定なんですね。(苦笑)
  • 萌琉 さん |
  • 2010/04/14 (02:09) |
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