姫金魚草
三国恋戦記中心、三国志関連二次創作サイト
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待てる待てないを考えてみる (拍手レス)
一応全キャラ制覇を目指しています。
あとは早安、翼徳、雲長かな? どうやら駄目大人好きが逸った結果がこうなっている気がしなくもありません。早安とかかなり好きキャラなんですが。
王子は待てる子、兄ぃは待てない子は通説ですが、他キャラはどうなんですかね?
個人的には、↓記事の通り、子龍とか地味に待てないんじゃないかと思っています。
孟徳は結構我慢強そう。公瑾は待てるというか、ヘタレだから手とか出せなさそう(え
我慢強さに定評のある師匠が、実はいざそういう雰囲気になったら待てなかったりしたら、かわいいなぁ!
そういう話も書きたいですなー。いかんせん、師匠√はやきもき多めで糖分少な目すぎるのです。
↓拍手レスですー
あとは早安、翼徳、雲長かな? どうやら駄目大人好きが逸った結果がこうなっている気がしなくもありません。早安とかかなり好きキャラなんですが。
王子は待てる子、兄ぃは待てない子は通説ですが、他キャラはどうなんですかね?
個人的には、↓記事の通り、子龍とか地味に待てないんじゃないかと思っています。
孟徳は結構我慢強そう。公瑾は待てるというか、ヘタレだから手とか出せなさそう(え
我慢強さに定評のある師匠が、実はいざそういう雰囲気になったら待てなかったりしたら、かわいいなぁ!
そういう話も書きたいですなー。いかんせん、師匠√はやきもき多めで糖分少な目すぎるのです。
↓拍手レスですー
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狡い人(子龍)
「おかえりなさい、子龍くん」
「――」
練兵を終えて部屋に戻ると、柔らかい声が子龍を迎えた。
椅子から立ち上がり、嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる姿。
「芙蓉姫と一緒に、お菓子を作ったんだけど。子龍くんはお仕事中だって言われたから、ここで待ってたんだ」
一緒に食べよう、お茶を入れるね――楽しげに笑ったままくるくると立ち動く彼女の姿に目を奪われて、しばし、反応することが出来なかった。
「……子龍くん?」
「あ、いえ。……すみません、待たせてしまって」
鍛錬に出ていることの多い子龍は、あまり部屋にいない。そのため、以前から彼女には部屋に入っていても構わないと伝えていたのだが――
(……おかえり、なさい)
本当に待っていたのは、今日がはじめてだ。
先程の言葉が、脳内で巡る。やわらかく、あたたかい香りのする言葉だ。
「疲れてるでしょ? 座って待ってて」
促されるままに、槍を壁に立てかけ、椅子に座る。こちらの生活に慣れるとともにすっかり身につけた所作で手際よく茶を入れる彼女を見ていると、なんだか、じんと、胸元が痛んだ。
(……彼女は、ここにいる)
(……此処の世界の人間として、ここに……)
それはなんて、奇跡のような話だろう。
彼女が此処に残ると決めてから大分経っているのに――未だに子龍は、そう実感するたびに、なにか未知の神のような物に、感謝したい気分になる。
やがて机に菓子と茶器が並べられ、よい香りの茶が子龍の前に置かれた。芙蓉姫と作ったという菓子は、焼き菓子だろうか、ふわりとして甘そうだった。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
花はいつもにこにことしていて、こちらもつられて口元が緩む。一つ手にとって口に運ぶと、優しい甘さが口の中に広がった。
「……美味しいです」
なにか、いい言葉が思いつけばいいのだけれど、生憎と自分は無骨な武人だ。ありきたりな反応にも、花はほっとしたように息をついた。
「よかった。味見は勿論したんだけど」
言いながら、自分も一つ手にとって口にする。子龍は、甘いものを食べているときの花を見ているのが好きだ。それは単に、彼女が嬉しそうにしているのが好きだ、というだけのことなのかもしれない。
(彼女が、笑っていると)
(それだけでなにか、救われたような気分になる)
自分が余り笑わない性質だからかもしれない――そう思いながら眺めた先、ふと、花の口元に、菓子の欠片がついているのが見えた。
「あ、花殿」
「え?」
「欠片が」
深く考えずに、指を伸ばす。口元のそれを掬い取る、そのときに、指先が柔らかな唇に触れた。
「……、」
柔らかな――口付けの感触を、思い出す。もしかしたら、花も思い出したのかもしれない。少し赤くなった顔で、慌てたように「あ、ありがとう、」と言う。
口付けたい。
仄かに赤みが差した頬、慌てたように瞬かれた目、そんなものがとても可愛らしくて、愛おしくて、子龍は素直にそう思った。
そして、身体はもっと素直に動いていた。
「え、……子龍く、」
近付いていく子龍の顔に、花は更に慌てたような声を上げる。押し留めるように肩に手を置くのに、子龍は首を傾けた。
「お嫌ですか?」
「え、っと、嫌、とかじゃなくて」
「では、何か問題が」
「……、」
真顔で言った子龍に、花は少し恨めしげな顔をした。
「……は、はずかしいよ」
「? だれも見ていませんし、あなたは私のことが」
好きなのではなかったのですか、と。
心底不思議に思いながら問うと、花は絶句したように口をぱくぱくさせた。それから、諦めたように息をつく。
「……、……子龍くんは、ずるいなぁ」
「?」
「なんでもない。……うん。好きだよ」
「はい。私も、貴女のことが好きです」
花はやわらかく笑って、目を閉じた。子龍は安心して、花の唇に、唇を重ねる。
記憶の通り柔らかく、今はほんのりと、甘い香りがする――ああ、これは、彼女の幸せの香りなのだと、そんなことを思った。
(子龍くんは待てない子なんじゃないかなぁ。天然の勝利とも言う)
Yo bailo (孟徳)
(孟徳√中。火事前日を想定)
優しくやわらかい舌で、ひやりとした心を舐められる。
触れた温かさで、はじめて自分が冷たくなっていたことに気付く。
母猫が傷付いた我が子を舐めるような。
そんな風に触れられたのだ。
あのとき恋に落ちたのだろう。
彼女にとって余りに想定外に、勝手に一人で恋をしたのだ。
それでも、そうと気付いてしまった以上、どうしたって彼女を手放すことなど出来ないのだけれど。
* * *
「……花ちゃん」
呟いて手を伸ばす。彼女は居ない。自分は多忙で、彼女は捕虜だ。本来であれば、こんな風に恋をするほどに、触れ合うことすらなかっただろう。
自身の収集癖は心得ている。珍しいものがすきなのだ。――それに彼女は、孟徳が失ったものをたくさん持っていて、孟徳が持っていないものをたくさん持っていた。そういうものに憧れるのは、人の性なのだろうと思う。
それでも、こんな風になってはいけなかった。
手を掲げる。
醜い傷痕。遠い日の戒め。
手を握っていて欲しい。
ずっと、この手を握っていて欲しい。
君が言ったように、君の手で、俺の傷を隠してしまって欲しい。――そうすれば。
(……そうすれば、)
(なんだと、言うんだろう)
ふわりと浮かび出てきた思いはなんだかとても危険なものであるような気がして、首を振る。手を握る。
けれど、自分で握ったところで、傷痕は醜く晒されたままだ。
(……ああ、だから)
(君が居ないと、駄目なんだ)
もうこの手を握ってくれる人は、君しか居ない。
なんだかひどく浅ましいことを考えているように思えた。
恋というには余りに歪なこの思いが、歪みきって彼女を閉じ込めてしまう前に、彼女に俺を止めて欲しい。この恋が育ちきってしまう前に。
(……なのに、あんなふうに)
(簡単に、好きだなんて言って)
あれは彼女の優しさで、気安さで、とてもこの歪みに釣りあうような何かではないのに。
それが判っているのに、もう、俺には止めることが出来ない。
彼女には相応しい世界があって――その隣に俺が居ることができるはずがないことは、わかりきっていることなのに。
(……ああ、)
(……静かだ)
夜の静寂。そっと、彼女が握ってくれた傷痕に、唇を寄せる。
相反した行為だと、判っている。
けれど、今は夜だから。静かな夜だからきっと、全て、なかったことにしてくれるだろう。
(愚かだって、知っているから)
今は全てに、目を瞑っていて欲しい。夜が過ぎれはまた、ちゃんとするから。
今はこうして――彼女のくれたささやかな優しさに、縋っていたい。
明日からは、ちゃんとするから。
誰にともなく許しを乞い、もう一度、目を閉じて手に唇を寄せた。
* * *
そのすぐ後に――その静寂を切り裂いて、罪深い炎が全てを燃やし。
それはまるで俺の描いた歪な喜劇で、彼女は何処にも逃げられなくなるのだけれど――
遠く篝火のように見えた炎を決して望んでいたわけではないことを、彼女は、信じてくれるだろうか。
信じて欲しい、なんて、許されない願いかもしれないけれど。
愛して欲しい、なんて、愚かしい願いかもしれないけれど。
(イメージソング・ジョバイロ/ポルノグラフィティ)
(歌詞がとても孟徳です、本当に(ry)
(『哀しい花つける前に貴方の手でつんでほしい』)
(『折れ掛けのペンで物語を少し変えようとしたら 歪な喜劇になった』)
(『貴方の隣に居る自分を 上手く思い描けない』)
(『離れないよう繋いでいたのは 指じゃなく不安だった』)
優しくやわらかい舌で、ひやりとした心を舐められる。
触れた温かさで、はじめて自分が冷たくなっていたことに気付く。
母猫が傷付いた我が子を舐めるような。
そんな風に触れられたのだ。
あのとき恋に落ちたのだろう。
彼女にとって余りに想定外に、勝手に一人で恋をしたのだ。
それでも、そうと気付いてしまった以上、どうしたって彼女を手放すことなど出来ないのだけれど。
* * *
「……花ちゃん」
呟いて手を伸ばす。彼女は居ない。自分は多忙で、彼女は捕虜だ。本来であれば、こんな風に恋をするほどに、触れ合うことすらなかっただろう。
自身の収集癖は心得ている。珍しいものがすきなのだ。――それに彼女は、孟徳が失ったものをたくさん持っていて、孟徳が持っていないものをたくさん持っていた。そういうものに憧れるのは、人の性なのだろうと思う。
それでも、こんな風になってはいけなかった。
手を掲げる。
醜い傷痕。遠い日の戒め。
手を握っていて欲しい。
ずっと、この手を握っていて欲しい。
君が言ったように、君の手で、俺の傷を隠してしまって欲しい。――そうすれば。
(……そうすれば、)
(なんだと、言うんだろう)
ふわりと浮かび出てきた思いはなんだかとても危険なものであるような気がして、首を振る。手を握る。
けれど、自分で握ったところで、傷痕は醜く晒されたままだ。
(……ああ、だから)
(君が居ないと、駄目なんだ)
もうこの手を握ってくれる人は、君しか居ない。
なんだかひどく浅ましいことを考えているように思えた。
恋というには余りに歪なこの思いが、歪みきって彼女を閉じ込めてしまう前に、彼女に俺を止めて欲しい。この恋が育ちきってしまう前に。
(……なのに、あんなふうに)
(簡単に、好きだなんて言って)
あれは彼女の優しさで、気安さで、とてもこの歪みに釣りあうような何かではないのに。
それが判っているのに、もう、俺には止めることが出来ない。
彼女には相応しい世界があって――その隣に俺が居ることができるはずがないことは、わかりきっていることなのに。
(……ああ、)
(……静かだ)
夜の静寂。そっと、彼女が握ってくれた傷痕に、唇を寄せる。
相反した行為だと、判っている。
けれど、今は夜だから。静かな夜だからきっと、全て、なかったことにしてくれるだろう。
(愚かだって、知っているから)
今は全てに、目を瞑っていて欲しい。夜が過ぎれはまた、ちゃんとするから。
今はこうして――彼女のくれたささやかな優しさに、縋っていたい。
明日からは、ちゃんとするから。
誰にともなく許しを乞い、もう一度、目を閉じて手に唇を寄せた。
* * *
そのすぐ後に――その静寂を切り裂いて、罪深い炎が全てを燃やし。
それはまるで俺の描いた歪な喜劇で、彼女は何処にも逃げられなくなるのだけれど――
遠く篝火のように見えた炎を決して望んでいたわけではないことを、彼女は、信じてくれるだろうか。
信じて欲しい、なんて、許されない願いかもしれないけれど。
愛して欲しい、なんて、愚かしい願いかもしれないけれど。
(イメージソング・ジョバイロ/ポルノグラフィティ)
(歌詞がとても孟徳です、本当に(ry)
(『哀しい花つける前に貴方の手でつんでほしい』)
(『折れ掛けのペンで物語を少し変えようとしたら 歪な喜劇になった』)
(『貴方の隣に居る自分を 上手く思い描けない』)
(『離れないよう繋いでいたのは 指じゃなく不安だった』)
どうしていいかわからない(仲謀)
俺は、前言を翻すような男ではない。
約定を違えるなどということは、人としては勿論のこと、なにより孫家のものとして、絶対にやってはならないことだと、わかっている。
それでも。
(それでも今は、絶対、どう考えても、コイツが悪いだろうが――!)
内心で思い切り叫びながら。
仲謀は、肩によりかかって浅く寝息を立てる花を起こさないように、小さく溜息をついたのだった。
* * *
どうしてこうなった。
はじめは花が、字を習いたいと言ってきた筈だった。仮にも軍師の身の上で、文盲では外聞が悪いだろうし、なにより何も出来ないのが辛いと、そんないじらしいことを言っていた。
丁度手が空いたところだったので、後に専門の師をつけることを言って、せっかくだからと軽く講義めいたことをやったのだ。
その場にあった報告書の中から、わかりやすいものを選んで広げて、ひとつの書簡をふたりで見るのだからと、長椅子に並んで座って。
書簡を覗き込む花の、柔らかそうな髪から、少しいい匂いがするような気がして、あまり集中できなかったが――いや、今はそんなことはどうでもいいのだ。
もしかしたら、その集中力のなさが、伝染したのかもしれない。
最初のうちは難しい顔をして聞いていた花が、いつの間にか困ったような顔になり、やがて疲れたような顔になって――休憩するかと声を掛けようとしたそのときに、くたり、とこちらに寄りかかってきたのだ。
(まぁ、百歩譲って)
(俺の説明はそう上手くねぇし、その上全くわからん文字を延々見させられて、眠くなるのは仕方ないとしても)
(――しても、だ)
仮にも――まだ付き合って間もない恋人の肩にもたれて、あっさりと寝息が立てられるというのは、――信用されているというよりも、まるで、想われていないようではないか。
(コイツに、んなつもりはねーんだろうけど)
あの過去での一夜でも、なんの警戒もなく寝入ってしまえる女だ。
単純に、この手のことに疎いというだけなのだろうと、理解は出来るが。
(……俺が、こんなに)
隣に座って。触れているわけでもないのに、体温が感じられる気がして、気を散らせてしまっていたのに。
彼女は恐らく、真面目に書簡ばかりを見て、――こんなに距離が近いことも、全く気にならなかったのだろう。
今だって、こちらは心音で彼女を起こしてしまわないか、そんなことすら気になるほど、動揺しているというのに。
(……、くそ)
なんであんなことを言ってしまったのか。
あの言葉さえなければ、このまま花に触れて、口付けをして――お前が悪いのだと、言ってしまえるのに。
(式を挙げるまで、なんて)
(長すぎるんだよ)
こんなに近くにいて、こんな風に体温を感じて、柔らかな寝息が聞こえて、仄かに香る彼女の香りを嗅いで。
(……、ああ、もう)
どうしていいかわからない。
顔に触れると、頬の熱さが、赤くなっている顔を自覚させる。かくりと頭を下げて、出来ることはただ一つ、花が一刻も早く目覚めてくれることを祈ることだけだった。
* * *
(……どうしよう)
(……なんかすごい困ってる……起きれない)
(……)
(仲謀、あったかいな)
(……抱きしめられたら、もっと、あったかいかな……)
(……!)
(な、何考えてるんだろう、私)
(どうしよう、きっと顔赤くなっちゃってるよ……)
(ああ、)
(どうしていいか、わかんないよ)
お互いにお互いの思惑を抱えたまま、奇妙な緊張を孕んだ静寂は、運の悪い使いの兵士が、新しい書簡を仲謀の元に届けに来るまで、破られることが無いのだった。
(王子は待てのできる子です)
約定を違えるなどということは、人としては勿論のこと、なにより孫家のものとして、絶対にやってはならないことだと、わかっている。
それでも。
(それでも今は、絶対、どう考えても、コイツが悪いだろうが――!)
内心で思い切り叫びながら。
仲謀は、肩によりかかって浅く寝息を立てる花を起こさないように、小さく溜息をついたのだった。
* * *
どうしてこうなった。
はじめは花が、字を習いたいと言ってきた筈だった。仮にも軍師の身の上で、文盲では外聞が悪いだろうし、なにより何も出来ないのが辛いと、そんないじらしいことを言っていた。
丁度手が空いたところだったので、後に専門の師をつけることを言って、せっかくだからと軽く講義めいたことをやったのだ。
その場にあった報告書の中から、わかりやすいものを選んで広げて、ひとつの書簡をふたりで見るのだからと、長椅子に並んで座って。
書簡を覗き込む花の、柔らかそうな髪から、少しいい匂いがするような気がして、あまり集中できなかったが――いや、今はそんなことはどうでもいいのだ。
もしかしたら、その集中力のなさが、伝染したのかもしれない。
最初のうちは難しい顔をして聞いていた花が、いつの間にか困ったような顔になり、やがて疲れたような顔になって――休憩するかと声を掛けようとしたそのときに、くたり、とこちらに寄りかかってきたのだ。
(まぁ、百歩譲って)
(俺の説明はそう上手くねぇし、その上全くわからん文字を延々見させられて、眠くなるのは仕方ないとしても)
(――しても、だ)
仮にも――まだ付き合って間もない恋人の肩にもたれて、あっさりと寝息が立てられるというのは、――信用されているというよりも、まるで、想われていないようではないか。
(コイツに、んなつもりはねーんだろうけど)
あの過去での一夜でも、なんの警戒もなく寝入ってしまえる女だ。
単純に、この手のことに疎いというだけなのだろうと、理解は出来るが。
(……俺が、こんなに)
隣に座って。触れているわけでもないのに、体温が感じられる気がして、気を散らせてしまっていたのに。
彼女は恐らく、真面目に書簡ばかりを見て、――こんなに距離が近いことも、全く気にならなかったのだろう。
今だって、こちらは心音で彼女を起こしてしまわないか、そんなことすら気になるほど、動揺しているというのに。
(……、くそ)
なんであんなことを言ってしまったのか。
あの言葉さえなければ、このまま花に触れて、口付けをして――お前が悪いのだと、言ってしまえるのに。
(式を挙げるまで、なんて)
(長すぎるんだよ)
こんなに近くにいて、こんな風に体温を感じて、柔らかな寝息が聞こえて、仄かに香る彼女の香りを嗅いで。
(……、ああ、もう)
どうしていいかわからない。
顔に触れると、頬の熱さが、赤くなっている顔を自覚させる。かくりと頭を下げて、出来ることはただ一つ、花が一刻も早く目覚めてくれることを祈ることだけだった。
* * *
(……どうしよう)
(……なんかすごい困ってる……起きれない)
(……)
(仲謀、あったかいな)
(……抱きしめられたら、もっと、あったかいかな……)
(……!)
(な、何考えてるんだろう、私)
(どうしよう、きっと顔赤くなっちゃってるよ……)
(ああ、)
(どうしていいか、わかんないよ)
お互いにお互いの思惑を抱えたまま、奇妙な緊張を孕んだ静寂は、運の悪い使いの兵士が、新しい書簡を仲謀の元に届けに来るまで、破られることが無いのだった。
(王子は待てのできる子です)