姫金魚草
三国恋戦記中心、三国志関連二次創作サイト
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Yo bailo (孟徳)
(孟徳√中。火事前日を想定)
優しくやわらかい舌で、ひやりとした心を舐められる。
触れた温かさで、はじめて自分が冷たくなっていたことに気付く。
母猫が傷付いた我が子を舐めるような。
そんな風に触れられたのだ。
あのとき恋に落ちたのだろう。
彼女にとって余りに想定外に、勝手に一人で恋をしたのだ。
それでも、そうと気付いてしまった以上、どうしたって彼女を手放すことなど出来ないのだけれど。
* * *
「……花ちゃん」
呟いて手を伸ばす。彼女は居ない。自分は多忙で、彼女は捕虜だ。本来であれば、こんな風に恋をするほどに、触れ合うことすらなかっただろう。
自身の収集癖は心得ている。珍しいものがすきなのだ。――それに彼女は、孟徳が失ったものをたくさん持っていて、孟徳が持っていないものをたくさん持っていた。そういうものに憧れるのは、人の性なのだろうと思う。
それでも、こんな風になってはいけなかった。
手を掲げる。
醜い傷痕。遠い日の戒め。
手を握っていて欲しい。
ずっと、この手を握っていて欲しい。
君が言ったように、君の手で、俺の傷を隠してしまって欲しい。――そうすれば。
(……そうすれば、)
(なんだと、言うんだろう)
ふわりと浮かび出てきた思いはなんだかとても危険なものであるような気がして、首を振る。手を握る。
けれど、自分で握ったところで、傷痕は醜く晒されたままだ。
(……ああ、だから)
(君が居ないと、駄目なんだ)
もうこの手を握ってくれる人は、君しか居ない。
なんだかひどく浅ましいことを考えているように思えた。
恋というには余りに歪なこの思いが、歪みきって彼女を閉じ込めてしまう前に、彼女に俺を止めて欲しい。この恋が育ちきってしまう前に。
(……なのに、あんなふうに)
(簡単に、好きだなんて言って)
あれは彼女の優しさで、気安さで、とてもこの歪みに釣りあうような何かではないのに。
それが判っているのに、もう、俺には止めることが出来ない。
彼女には相応しい世界があって――その隣に俺が居ることができるはずがないことは、わかりきっていることなのに。
(……ああ、)
(……静かだ)
夜の静寂。そっと、彼女が握ってくれた傷痕に、唇を寄せる。
相反した行為だと、判っている。
けれど、今は夜だから。静かな夜だからきっと、全て、なかったことにしてくれるだろう。
(愚かだって、知っているから)
今は全てに、目を瞑っていて欲しい。夜が過ぎれはまた、ちゃんとするから。
今はこうして――彼女のくれたささやかな優しさに、縋っていたい。
明日からは、ちゃんとするから。
誰にともなく許しを乞い、もう一度、目を閉じて手に唇を寄せた。
* * *
そのすぐ後に――その静寂を切り裂いて、罪深い炎が全てを燃やし。
それはまるで俺の描いた歪な喜劇で、彼女は何処にも逃げられなくなるのだけれど――
遠く篝火のように見えた炎を決して望んでいたわけではないことを、彼女は、信じてくれるだろうか。
信じて欲しい、なんて、許されない願いかもしれないけれど。
愛して欲しい、なんて、愚かしい願いかもしれないけれど。
(イメージソング・ジョバイロ/ポルノグラフィティ)
(歌詞がとても孟徳です、本当に(ry)
(『哀しい花つける前に貴方の手でつんでほしい』)
(『折れ掛けのペンで物語を少し変えようとしたら 歪な喜劇になった』)
(『貴方の隣に居る自分を 上手く思い描けない』)
(『離れないよう繋いでいたのは 指じゃなく不安だった』)
優しくやわらかい舌で、ひやりとした心を舐められる。
触れた温かさで、はじめて自分が冷たくなっていたことに気付く。
母猫が傷付いた我が子を舐めるような。
そんな風に触れられたのだ。
あのとき恋に落ちたのだろう。
彼女にとって余りに想定外に、勝手に一人で恋をしたのだ。
それでも、そうと気付いてしまった以上、どうしたって彼女を手放すことなど出来ないのだけれど。
* * *
「……花ちゃん」
呟いて手を伸ばす。彼女は居ない。自分は多忙で、彼女は捕虜だ。本来であれば、こんな風に恋をするほどに、触れ合うことすらなかっただろう。
自身の収集癖は心得ている。珍しいものがすきなのだ。――それに彼女は、孟徳が失ったものをたくさん持っていて、孟徳が持っていないものをたくさん持っていた。そういうものに憧れるのは、人の性なのだろうと思う。
それでも、こんな風になってはいけなかった。
手を掲げる。
醜い傷痕。遠い日の戒め。
手を握っていて欲しい。
ずっと、この手を握っていて欲しい。
君が言ったように、君の手で、俺の傷を隠してしまって欲しい。――そうすれば。
(……そうすれば、)
(なんだと、言うんだろう)
ふわりと浮かび出てきた思いはなんだかとても危険なものであるような気がして、首を振る。手を握る。
けれど、自分で握ったところで、傷痕は醜く晒されたままだ。
(……ああ、だから)
(君が居ないと、駄目なんだ)
もうこの手を握ってくれる人は、君しか居ない。
なんだかひどく浅ましいことを考えているように思えた。
恋というには余りに歪なこの思いが、歪みきって彼女を閉じ込めてしまう前に、彼女に俺を止めて欲しい。この恋が育ちきってしまう前に。
(……なのに、あんなふうに)
(簡単に、好きだなんて言って)
あれは彼女の優しさで、気安さで、とてもこの歪みに釣りあうような何かではないのに。
それが判っているのに、もう、俺には止めることが出来ない。
彼女には相応しい世界があって――その隣に俺が居ることができるはずがないことは、わかりきっていることなのに。
(……ああ、)
(……静かだ)
夜の静寂。そっと、彼女が握ってくれた傷痕に、唇を寄せる。
相反した行為だと、判っている。
けれど、今は夜だから。静かな夜だからきっと、全て、なかったことにしてくれるだろう。
(愚かだって、知っているから)
今は全てに、目を瞑っていて欲しい。夜が過ぎれはまた、ちゃんとするから。
今はこうして――彼女のくれたささやかな優しさに、縋っていたい。
明日からは、ちゃんとするから。
誰にともなく許しを乞い、もう一度、目を閉じて手に唇を寄せた。
* * *
そのすぐ後に――その静寂を切り裂いて、罪深い炎が全てを燃やし。
それはまるで俺の描いた歪な喜劇で、彼女は何処にも逃げられなくなるのだけれど――
遠く篝火のように見えた炎を決して望んでいたわけではないことを、彼女は、信じてくれるだろうか。
信じて欲しい、なんて、許されない願いかもしれないけれど。
愛して欲しい、なんて、愚かしい願いかもしれないけれど。
(イメージソング・ジョバイロ/ポルノグラフィティ)
(歌詞がとても孟徳です、本当に(ry)
(『哀しい花つける前に貴方の手でつんでほしい』)
(『折れ掛けのペンで物語を少し変えようとしたら 歪な喜劇になった』)
(『貴方の隣に居る自分を 上手く思い描けない』)
(『離れないよう繋いでいたのは 指じゃなく不安だった』)
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