姫金魚草
三国恋戦記中心、三国志関連二次創作サイト
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うわぁやってしまった。(拍手レスとか)
子龍の存在をすっかり失念していました。ごめんよ子龍。
実は最初師匠も忘れてて、慌てて書き足したとかは内緒です。>動物ネタ
子龍はなんだろうなぁ。勿論忠犬な感じはするけど、犬って感じはしないしなぁ。むむ。
あと公式の四月馬鹿にやられたwwww
この調子で来年は元譲√お願いしますデイジー様
続いて拍手レス。流石に登録から日が経つとアクセスも拍手も落ち着いてきますねー。
実は最初師匠も忘れてて、慌てて書き足したとかは内緒です。>動物ネタ
子龍はなんだろうなぁ。勿論忠犬な感じはするけど、犬って感じはしないしなぁ。むむ。
あと公式の四月馬鹿にやられたwwww
この調子で来年は元譲√お願いしますデイジー様
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苦労性と四月馬鹿(文若)
(文若GOOD後です。)
「え? 花ちゃん? 花ちゃんなら今頃俺の部屋で寝てるよ」
いつもの時間に執務室にあらわれない花を探してうろうろしていた文若を捕まえたのは、満面の笑みの孟徳だった。
ぴし、と、自分の顔が凍りついたのを自覚する。
「じゃ、俺は仕事があるから」
何時もはいかに逃げ回るかを考えているくせに、こんなときばかりひらりと手を振って去っていく。
(……丞相の、部屋で?)
いまあの赤いのは何と言ったのか。主君に対して不敬に過ぎる呼び名が自然と胸から湧いて出る。
(……いや、とにかく、探しに)
はっと我に返って、(かなりの間微動だにせず立ち尽くしていた文若の姿を、柱の影からにやにやと眺めていた赤いのには気付かずに)慌てて孟徳の部屋に向かいかける。
しかし。
(……丞相の、部屋?)
内心でもう一度、繰り返す。丞相の私室――恐らくは寝室に、主の許可なく立ち入る権限など、何人にも与えられては居ない。それは、腹心ともいえる文若ですら例外ではない。
(……あれは、いつもの悪い冗談だ。そうに決まっている)
ようやっとのことでその考えに辿り着いた文若は、自分を納得させるように「悪い冗談、」と小さく呟きながら、踵を返す。執務室に戻れば、なんでもない顔で花が迎えてくれるだろう。そうに決まっている――
* * *
「ごめんなさいっ!」
「……!?」
焦るような惑うような、ふらふらとした足取りで執務室に辿り着いた文若を迎えたのは、確かに花だった。ただし、文若の姿を認めた途端、困りきった顔で頭を下げる――そんな予想外のリアクション付きの。
(……ごめんなさい……?)
遅れた事を怒るとでも思ったのだろうか。いや、それにしては、思い切り深く下げられた頭がいかにも大仰過ぎる。恐らくもっと別の――
(――別の、)
(謝るような、何かが?)
思い出されるのは、勿論、先程の孟徳の言葉である。
(いや、そんなことは、)
「孟徳さんに、なにか言われましたよね?」
「……!!?」
そんなことはない、と思いかけたところでの花の言葉に、文若の眉間の皺が深くなる。花はその表情を見て、やっぱり、と空を仰いだ。
「……花、どういう――」
どういうことだ、ありえない、けれどあの手の速さが通常の三倍の赤いのだし、いやでも花に限って、というか私はどうすればいいんだ? ああそうだ毒がまだ――
ぐるぐる回る思考に翻弄されながら尋ねた声を、花が遮る。
「今日は、嘘をついてもいい日なんです」
「……は?」
一瞬では理解が及ばずに、文若はさらに険しく眉を寄せた。
それを怒りととったのだろう。花は縮こまるようにしながらこちらを上目で見て、慌てて続けた。
「私の国に、そういう日があったんです……朝、ここに来る途中で孟徳さんに会って、それを教えたら『文若が皺を無くすくらい驚かせてやろう』って言って、そのままお庭に連れて行かれて、お茶とお菓子を出されて、しばらくゆっくりしててって言われて……」
「……、……」
「最初はちょっと面白いかも、って思っちゃって、でも、一人でお茶を飲んでるうちに、文若さんのことを色々考えてたら」
花がこちらを見上げる。
「文若さん、孟徳さんに嘘つかれたら、傷付くだろうなって思って。……慌てて、戻ってきたんですけど、居ないし、戻ってくるのが遅いから、何かあったんだろうと思って……」
間に合わなくて、ごめんなさい。
もう一度深く頭を下げる花に身体を起こさせて、文若はそのまま花の身体を抱きしめた。
「……? 文若さ、」
「つまり、丞相のあれは、嘘なんだな」
「……、何をおっしゃったかはわかりませんけど、嘘だと思います」
「……そうか」
一気に身体から力が抜ける。花に縋りつくような姿勢になった文若に、花は「どうしたんですか、そんなひどい嘘をつかれたんですか」とわたわたする。文若はもう一度ぎゅうと花を抱きしめてから、ゆっくりと笑った。
「……いや、……少しばかり、試されて踊らされただけだ。乗せられたこちらが悪い」
「嘘をつくほうが悪いに決まってます! ごめんなさい、私が――」
「いいんだ」
あれが本当でないのならば、なんだって、どうだっていい。
文若はすっかり力の抜けた顔で、眉間に皺の欠片もなく笑って、そっと花に口付けた。
* * *
「で、なんかいきなりぴたっと止まったかと思えばまた固まって。それからふらふらーっと歩き出して。変な病気の人みたいだったなー」
「……孟徳、お前は此処に仕事をしに来たのか、それとも文若の話をしに来たのか?」
「後者に決まってるでしょ。あー面白かった。あんなあいつはじめて見たよ」
「……しかし、それは、ややこしい話になってはいないのか? いや、あの二人のことだし、大丈夫だとは思うが」
「大丈夫だろ。大丈夫じゃなかったら、嘘を真にしちゃえばいいだけの話だし」
「……孟徳」
「これも嘘だって。今日は嘘をついていい日なんだからさ」
怖い声出すなよ、と笑う孟徳が、本当に楽しそうに見えて、元譲は目を細めた。
あの日から――文若が孟徳の命を救ったあの日から、孟徳が纏う空気は明らかに柔らかくなった。
(……それもこれも、あの娘のお陰か)
「次は誰を驚かそうかな」
「……いや、流石に文若以外はやめておけよ」
孟徳がこんな悪戯を仕掛けるなど、他に居ないと知っていて、釘を刺した。
はあい、と聞き分けよく頷いた孟徳は、残念だなと続けながらも、やはりとても、楽しそうに見えたのだった。
(エイプリルフールに間に合った……!)
「え? 花ちゃん? 花ちゃんなら今頃俺の部屋で寝てるよ」
いつもの時間に執務室にあらわれない花を探してうろうろしていた文若を捕まえたのは、満面の笑みの孟徳だった。
ぴし、と、自分の顔が凍りついたのを自覚する。
「じゃ、俺は仕事があるから」
何時もはいかに逃げ回るかを考えているくせに、こんなときばかりひらりと手を振って去っていく。
(……丞相の、部屋で?)
いまあの赤いのは何と言ったのか。主君に対して不敬に過ぎる呼び名が自然と胸から湧いて出る。
(……いや、とにかく、探しに)
はっと我に返って、(かなりの間微動だにせず立ち尽くしていた文若の姿を、柱の影からにやにやと眺めていた赤いのには気付かずに)慌てて孟徳の部屋に向かいかける。
しかし。
(……丞相の、部屋?)
内心でもう一度、繰り返す。丞相の私室――恐らくは寝室に、主の許可なく立ち入る権限など、何人にも与えられては居ない。それは、腹心ともいえる文若ですら例外ではない。
(……あれは、いつもの悪い冗談だ。そうに決まっている)
ようやっとのことでその考えに辿り着いた文若は、自分を納得させるように「悪い冗談、」と小さく呟きながら、踵を返す。執務室に戻れば、なんでもない顔で花が迎えてくれるだろう。そうに決まっている――
* * *
「ごめんなさいっ!」
「……!?」
焦るような惑うような、ふらふらとした足取りで執務室に辿り着いた文若を迎えたのは、確かに花だった。ただし、文若の姿を認めた途端、困りきった顔で頭を下げる――そんな予想外のリアクション付きの。
(……ごめんなさい……?)
遅れた事を怒るとでも思ったのだろうか。いや、それにしては、思い切り深く下げられた頭がいかにも大仰過ぎる。恐らくもっと別の――
(――別の、)
(謝るような、何かが?)
思い出されるのは、勿論、先程の孟徳の言葉である。
(いや、そんなことは、)
「孟徳さんに、なにか言われましたよね?」
「……!!?」
そんなことはない、と思いかけたところでの花の言葉に、文若の眉間の皺が深くなる。花はその表情を見て、やっぱり、と空を仰いだ。
「……花、どういう――」
どういうことだ、ありえない、けれどあの手の速さが通常の三倍の赤いのだし、いやでも花に限って、というか私はどうすればいいんだ? ああそうだ毒がまだ――
ぐるぐる回る思考に翻弄されながら尋ねた声を、花が遮る。
「今日は、嘘をついてもいい日なんです」
「……は?」
一瞬では理解が及ばずに、文若はさらに険しく眉を寄せた。
それを怒りととったのだろう。花は縮こまるようにしながらこちらを上目で見て、慌てて続けた。
「私の国に、そういう日があったんです……朝、ここに来る途中で孟徳さんに会って、それを教えたら『文若が皺を無くすくらい驚かせてやろう』って言って、そのままお庭に連れて行かれて、お茶とお菓子を出されて、しばらくゆっくりしててって言われて……」
「……、……」
「最初はちょっと面白いかも、って思っちゃって、でも、一人でお茶を飲んでるうちに、文若さんのことを色々考えてたら」
花がこちらを見上げる。
「文若さん、孟徳さんに嘘つかれたら、傷付くだろうなって思って。……慌てて、戻ってきたんですけど、居ないし、戻ってくるのが遅いから、何かあったんだろうと思って……」
間に合わなくて、ごめんなさい。
もう一度深く頭を下げる花に身体を起こさせて、文若はそのまま花の身体を抱きしめた。
「……? 文若さ、」
「つまり、丞相のあれは、嘘なんだな」
「……、何をおっしゃったかはわかりませんけど、嘘だと思います」
「……そうか」
一気に身体から力が抜ける。花に縋りつくような姿勢になった文若に、花は「どうしたんですか、そんなひどい嘘をつかれたんですか」とわたわたする。文若はもう一度ぎゅうと花を抱きしめてから、ゆっくりと笑った。
「……いや、……少しばかり、試されて踊らされただけだ。乗せられたこちらが悪い」
「嘘をつくほうが悪いに決まってます! ごめんなさい、私が――」
「いいんだ」
あれが本当でないのならば、なんだって、どうだっていい。
文若はすっかり力の抜けた顔で、眉間に皺の欠片もなく笑って、そっと花に口付けた。
* * *
「で、なんかいきなりぴたっと止まったかと思えばまた固まって。それからふらふらーっと歩き出して。変な病気の人みたいだったなー」
「……孟徳、お前は此処に仕事をしに来たのか、それとも文若の話をしに来たのか?」
「後者に決まってるでしょ。あー面白かった。あんなあいつはじめて見たよ」
「……しかし、それは、ややこしい話になってはいないのか? いや、あの二人のことだし、大丈夫だとは思うが」
「大丈夫だろ。大丈夫じゃなかったら、嘘を真にしちゃえばいいだけの話だし」
「……孟徳」
「これも嘘だって。今日は嘘をついていい日なんだからさ」
怖い声出すなよ、と笑う孟徳が、本当に楽しそうに見えて、元譲は目を細めた。
あの日から――文若が孟徳の命を救ったあの日から、孟徳が纏う空気は明らかに柔らかくなった。
(……それもこれも、あの娘のお陰か)
「次は誰を驚かそうかな」
「……いや、流石に文若以外はやめておけよ」
孟徳がこんな悪戯を仕掛けるなど、他に居ないと知っていて、釘を刺した。
はあい、と聞き分けよく頷いた孟徳は、残念だなと続けながらも、やはりとても、楽しそうに見えたのだった。
(エイプリルフールに間に合った……!)
02 その微笑みは誰のもの
一人目は子元の生きた世界を願った。
二人目は会うことが無かったけれど、呉に居たらしいと聞いた。
三人目は美周朗を一目みたいと願った少女だった。
四度目の世界。
花が孔明となってから四度目の世界。四人目の異邦者は、まだ、見えない。
* * *
「お茶は好き?」
宣言どおり花のもとを訪れた孟徳は、手土産に柔らかな香りの茶葉を携えてきた。
捕虜に出すものではないと一目で知れたが、断る理由も思い当たらなかったので頷いた。孟徳が手ずから淹れた茶などという贅沢なものを頂きながら、花はこちらをにこにこと眺める孟徳を、ぶしつけとも言える視線で見返した。
四度目ともなれば、世界のことなど大体知れる。緩慢な円環の中で花はまさに雲長と同じ、飽いた生を送っていた。
けれどこの男。
曹孟徳は、興味深い男だった。好奇心を隠そうともしない瞳から、ひとかけらの悪意も感じ取れないことが不気味だった。花は自らの献策で、多くの魏の兵士を殺している。彼にとっては憎むべき存在だろう。
「甘い香りですね。美味しいです」
「そう? 良かった。俺はお茶のことはよくわかんないんだけど、文若が好きでさ」
世間話以上のことを振ろうとしない男が不思議だった。
「……聞きたいことがあるのでは?」
のらりくらりとした会話にも飽いて、ついにこちらから切り出してしまった。孟徳は目を瞬いて、首を傾げた。
「答えてくれるの?」
「それは、質問の内容によります」
「そりゃそうか。んー、何を聞こうかな」
腹の探りあいをしているはずなのに、孟徳はまるで気構えない。
「んー、そうだ。なんで、玄徳のところに仕官したの?」
「……それは、貴方のところではなくて、という意味ですか?」
「いや、単純な興味」
「それでしたら。仕えるべき方だと思ったからです」
「……ふぅん、」
仕えるべき、ね。
孟徳の声がはじめて何かを含んだ。
別に、選んだわけではない。決まっていたことに、従っただけだ。けれどそれを言うわけにはいかなかったから、嘘をついた。
「どんなところが?」
「三顧の礼を以って私などを迎えてくれたところは勿論、なにより、劉玄徳は徳のお方ですから」
「俺だって、かの伏龍がこんな可愛い子だって知ってたら、三回どころか百回だって訪ねてたよ。花束を持ってさ」
それは訪ねる意図が違うでしょう。
そう返すことは自惚れのように感じられて、花は返す言葉を探した。自然と下がった視線がふと、椀を持つ孟徳の手を捕らえる。
布の巻かれた左手。
「……お怪我を?」
「え? ああ、これ?」
先程の手つきを見る限り、ひどいものではなさそうだが。孟徳は隠すように手を引いて、苦笑した。
珍しい顔だ、と思った。
「若気の至りというか……戒めというか。怪我自体は治ってるんだけど、傷痕がひどいからさ。隠してるんだ」
「傷痕、」
彼もまた、最初から強大であったわけではないのだ。今更の様に、そんな事実を思い出した。
痕の残るような大きな怪我を、総大将である彼自身が負うような、そんなひどい戦いを、彼は経験している。
そう――
四回目の花は知っている。かの悪名高い徐州攻めと、その顛末を。
それが何に対する戒めなのか――
「……なに? 孔明」
隠された手に注がれたままの花の視線に、孟徳がいぶかしげに首を傾げる。
「……何を」
「……?」
「何を戒めているのか、伺っても?」
問いは自然と、口をついて出た。言ってから、出すぎた問いだと気がついた。はっとして視線を孟徳に向けると、孟徳は静かに微笑んで花を見た。
「教えないよ」
「……すみませ、」
「君が嘘ばかりつくから。俺だけ本当のことを教えるのは、不公平でしょ?」
「……!」
嘘だと。
花の言葉は全て嘘だと、どうして彼は知るのだろう。
「俺は君に嘘をつかないよ」
孟徳は柔らかく笑んだまま、言った。
「君が俺に嘘をつくのは自由だけどね。……全てを見通す目を持つ君なら、俺の言葉が嘘か本当かなんて、わかるだろ?」
「……」
わからない。
わかるのは花が経験した、これから起こる事象のことだけだ。
人の心など、見えはしない。
(知りたいとも――思わない)
全ては通り過ぎていく「登場人物」に過ぎない。どんなに知っても、また一から世界がはじまって、彼等の心もまた、一に戻ってしまう。どんなに言葉を交わしても、いや、交わせば交わすだけ、虚しくなるだけだ。
そうして花は、人を知りたいと思うことを、忘れてしまった。
(……なのに)
(なんでこの人の、この笑みが)
(この人が何を考えているのか知りたいと、思うのだろう)
黙り込んでしまった花の前で、孟徳はゆっくりと息をついた。
そして、「また来るよ」と声を残して、花の部屋を立ち去ったのだった。
(次回から、四人目の異邦者……つまり、オリキャラが登場です。すみません……)
二人目は会うことが無かったけれど、呉に居たらしいと聞いた。
三人目は美周朗を一目みたいと願った少女だった。
四度目の世界。
花が孔明となってから四度目の世界。四人目の異邦者は、まだ、見えない。
* * *
「お茶は好き?」
宣言どおり花のもとを訪れた孟徳は、手土産に柔らかな香りの茶葉を携えてきた。
捕虜に出すものではないと一目で知れたが、断る理由も思い当たらなかったので頷いた。孟徳が手ずから淹れた茶などという贅沢なものを頂きながら、花はこちらをにこにこと眺める孟徳を、ぶしつけとも言える視線で見返した。
四度目ともなれば、世界のことなど大体知れる。緩慢な円環の中で花はまさに雲長と同じ、飽いた生を送っていた。
けれどこの男。
曹孟徳は、興味深い男だった。好奇心を隠そうともしない瞳から、ひとかけらの悪意も感じ取れないことが不気味だった。花は自らの献策で、多くの魏の兵士を殺している。彼にとっては憎むべき存在だろう。
「甘い香りですね。美味しいです」
「そう? 良かった。俺はお茶のことはよくわかんないんだけど、文若が好きでさ」
世間話以上のことを振ろうとしない男が不思議だった。
「……聞きたいことがあるのでは?」
のらりくらりとした会話にも飽いて、ついにこちらから切り出してしまった。孟徳は目を瞬いて、首を傾げた。
「答えてくれるの?」
「それは、質問の内容によります」
「そりゃそうか。んー、何を聞こうかな」
腹の探りあいをしているはずなのに、孟徳はまるで気構えない。
「んー、そうだ。なんで、玄徳のところに仕官したの?」
「……それは、貴方のところではなくて、という意味ですか?」
「いや、単純な興味」
「それでしたら。仕えるべき方だと思ったからです」
「……ふぅん、」
仕えるべき、ね。
孟徳の声がはじめて何かを含んだ。
別に、選んだわけではない。決まっていたことに、従っただけだ。けれどそれを言うわけにはいかなかったから、嘘をついた。
「どんなところが?」
「三顧の礼を以って私などを迎えてくれたところは勿論、なにより、劉玄徳は徳のお方ですから」
「俺だって、かの伏龍がこんな可愛い子だって知ってたら、三回どころか百回だって訪ねてたよ。花束を持ってさ」
それは訪ねる意図が違うでしょう。
そう返すことは自惚れのように感じられて、花は返す言葉を探した。自然と下がった視線がふと、椀を持つ孟徳の手を捕らえる。
布の巻かれた左手。
「……お怪我を?」
「え? ああ、これ?」
先程の手つきを見る限り、ひどいものではなさそうだが。孟徳は隠すように手を引いて、苦笑した。
珍しい顔だ、と思った。
「若気の至りというか……戒めというか。怪我自体は治ってるんだけど、傷痕がひどいからさ。隠してるんだ」
「傷痕、」
彼もまた、最初から強大であったわけではないのだ。今更の様に、そんな事実を思い出した。
痕の残るような大きな怪我を、総大将である彼自身が負うような、そんなひどい戦いを、彼は経験している。
そう――
四回目の花は知っている。かの悪名高い徐州攻めと、その顛末を。
それが何に対する戒めなのか――
「……なに? 孔明」
隠された手に注がれたままの花の視線に、孟徳がいぶかしげに首を傾げる。
「……何を」
「……?」
「何を戒めているのか、伺っても?」
問いは自然と、口をついて出た。言ってから、出すぎた問いだと気がついた。はっとして視線を孟徳に向けると、孟徳は静かに微笑んで花を見た。
「教えないよ」
「……すみませ、」
「君が嘘ばかりつくから。俺だけ本当のことを教えるのは、不公平でしょ?」
「……!」
嘘だと。
花の言葉は全て嘘だと、どうして彼は知るのだろう。
「俺は君に嘘をつかないよ」
孟徳は柔らかく笑んだまま、言った。
「君が俺に嘘をつくのは自由だけどね。……全てを見通す目を持つ君なら、俺の言葉が嘘か本当かなんて、わかるだろ?」
「……」
わからない。
わかるのは花が経験した、これから起こる事象のことだけだ。
人の心など、見えはしない。
(知りたいとも――思わない)
全ては通り過ぎていく「登場人物」に過ぎない。どんなに知っても、また一から世界がはじまって、彼等の心もまた、一に戻ってしまう。どんなに言葉を交わしても、いや、交わせば交わすだけ、虚しくなるだけだ。
そうして花は、人を知りたいと思うことを、忘れてしまった。
(……なのに)
(なんでこの人の、この笑みが)
(この人が何を考えているのか知りたいと、思うのだろう)
黙り込んでしまった花の前で、孟徳はゆっくりと息をついた。
そして、「また来るよ」と声を残して、花の部屋を立ち去ったのだった。
(次回から、四人目の異邦者……つまり、オリキャラが登場です。すみません……)
孟徳=ウサギ説
さみしくなるとヤンデレになります。(←
兄ぃ=おおかみさん
雲長=シャム猫
翼徳=大型犬
文若=はむすたー
王子=豹
公瑾=わんこ
草案=野良猫
師匠=亀
なイメージがあります。花ちゃんは皆の飼い主です(あれ?
ひさしぶりの落書きとか
兄ぃ=おおかみさん
雲長=シャム猫
翼徳=大型犬
文若=はむすたー
王子=豹
公瑾=わんこ
草案=野良猫
師匠=亀
なイメージがあります。花ちゃんは皆の飼い主です(あれ?
ひさしぶりの落書きとか