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姫金魚草

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洒落者の憂鬱(孟徳)

(文若はおしゃれで美形だったらしいよ)

色とりどりの、華やかな布に埋もれる。
とにかくきらびやかで、めがちかちかする。たくさんの侍女が花の体に布を当てては離し当てては離し、中心の花はもう目が回りそうだ。
「やはりその色と先刻の黄だな。かまいませんか、丞相」
「うん、明るい色のがやっぱりかわいいねぇ」
くるくるする花の前では、政務の時と変わらぬ生真面目な顔の文若と、にへにへと相好を崩す孟徳がいた。
「お、おしまいですか」
おしまいであってくれ。祈りながらの言葉に、けれど文若は非情な言葉を返す。
「いや。これから帯と帯留め、それに羽織と髪飾りを決めねばならん」
「……」
「これも仕事だと思え」
文若はため息とともに言った。花は一瞬くらりとしたものを感じたが、どうにか気合を入れなおす。
「はい、がんばりますっ」
「うむ、その意気だ」
なぜか体育会系なやり取りをかわす主従に、孟徳は不思議そうに首をかしげた。

「なんで仕事あつかいかなぁ? 俺はかわいー花ちゃんがいっぱい見れて楽しいけど……ってなんでそんな目するの二人ともっ」

* * *

そもそも宴があると聞いたとき、花は以前送られた衣装で出るものだとばかり思っていた。
まさかまさか、宴ごとに衣装を新調するのがならいだなどと、どれだけ贅沢だ。思わず呆れた声を出すと、孟徳は「俺もそう思うけど、」と前置きしてから、言い訳のように言う。
「でもねぇ、俺が一番偉いわけだからさ。一番偉い人は一番贅沢して、一番豊かだってことを見せてあげないといけないわけなんだよ」
「偉い人が倹約すればみんな倹約しますよ!」
「うん、でもそれで贅沢できるところに流れられても困るからね。俺の懐が厳しいと思われるのも困るし」
といろいろ並べ立てつつ、孟徳が呼んだのはたくさんの針子となぜか文若だった。
文若はひどくむすりとした顔をして、けれど手慣れた様子で針子に指示を出す。
「丞相の分は以前お見立てしたもので構いませんね」
「うん、なんでもいいよ」
「……」
孟徳の答えに一つため息をついた文若は、気を取り直したように花に向かった。きょとんとする花の前で、文若の様子はまるで仕事の時と変わらなかった。
「言われたとおりに動け。わかったな」
「は、はい」

* * *

そうして冒頭の場面に至るのである。
「第一丞相がお見立てくださるなら、私などいなくてもかまわなかったでしょう」
「あーだめだめ、俺にはぜんぶかわいく見えるし。それにこういう公の場のとかよくわかんないし」
「よくわからないでは困ります」
「いいんだよ、お前がわかってれば」
どうやらこの主従、一見主のほうが洒落者で従者のほうが無粋に見えるが、現実は真逆であるらしい。
「服なんて着られればいいと思うんだけどなぁ」
「体面というものがあります」
会話の間にも文若は慣れた手つきで布を見分し、すでに疲れ切っている花の意志はもう窺う気もない様子で衣装の細部を決めていく。どうやら、孟徳で慣れきっているらしい。
「あとは髪か。――しかし惜しいな」
文若は事務的な所作で花の髪を手に取った。すっかり仕事の体である。
「お前の国には、髪を伸ばす習慣はないのだったか。髢でもどうにかならないわけではないが、ここまでの質の良さはなかなかお目にかかれない」
「え、と、……伸ばします」
「うん、それがいい」
ごく普通に褒められて花はついごく普通に照れた。文若はそれに気づくでもなく一つ頷く。
そうしてから――ものすごい目で文若をにらんでいる孟徳に気付いた。
「!?」
「手を離せ」
低い声と鋭い目はいろいろと本気である。
「は!? ……ああ」
なんでいきなり殺されそうになっているんだ私は、さすがに一瞬驚いて目を見開いて、けれど何に向けられた視線かがわかれば一瞬で呆れたような顔になる。
「失礼しました」
「お前じゃなかったら斬ってたかもしれない」
「……物騒なことを言わないでいただきたい」
お前じゃなかったらは喜ぶべきところかもしれないが、文若の口をついたのは小言だった。そんなことで死人を出されては困る。花の髪から手を放すと、やっと孟徳の手から剣呑さが消えた。
「花ちゃんの髪が綺麗なのはたしかだから別にいいけど、さらさらでさわり心地もいいのは俺だけが知ってればいいんだよ」
「も、孟徳さん……」
 花が照れる。無論先ほどの比ではなく。うっかり見詰め合ってしまって、さらに頬が染まる。
 文若は取り合わないことに決め、二人の世界を作り上げるのの後ろで、商人から受け取ったかんざしを花の頭に充てて見分する。
 にこにこと笑って何も言わない商人の、なんというか職業意識の高さに感服させられる光景だった。
「うん、これをもらおう。丞相、かまいませんね」
「んー。あ、そっちの赤い石のやつも」
「……今回の見立てでは、浮いてしまうかと思いますが」
「うん。それは俺の、個人的な好み」
 だから俺の私財から出しといて、とひどく適当にいう男は、どうやら見立てが完了したとみて早速花の髪を撫で始めた。持ち上げて唇を寄せて、細くて色が薄いから銀と赤がよく映えるよと笑う。
(――なんだ)
(ちゃんと見立てられるじゃないか)
文若は一つため息をついた。どうせそうして自分で見立てて飾って、見せびらかすよりも閉じ込めたい性分なのだと知っていた。もう好きにしろ。思いながら、手を振って商人と針子を下がらせ、自分も部屋を後にする。
自分の服など何一つ見立てたことはなく、女に送るものもねだられたものばかりだった男が――思えば微笑ましい、と言えなくもない。言えなくもない。
そう言い聞かせていなければ、いいようにつかわれたうえに殺されそうになった自分が可哀想すぎる、と、文若は我が身のはかなさを嘆いたのだった。











(リア充爆発しろ!←文若心の叫び)

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