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姫金魚草

三国恋戦記中心、三国志関連二次創作サイト

   

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散花

(R-18)
(いや、直接描写は無いからR-15くらい?)

灯りが貴重品であるという世界にもう慣れ親しんで久しいけれど、ときおりあの眩いばかりのネオン街を思い出すこともある。
そういう時は、外に出てそっと空を見上げる。降り注ぐような星の瞬く空を見てから、目を閉じる。夜は暗いのだ、という、当然のことを身にしみこませるために。そんな単純なこともわかっていなかった、昔の方がおかしいのだと思うために。
明かりのない夜を繰り返せば、暗闇への恐怖にも大分慣れた。蝋の明かりが揺らめいて、風の動きを教えてくれる。それは即ち、来客の知らせだった。
本当に、久しぶりに、遠い昔の電気による灯りを思い出したのは、恐らく久々に夜を恐れていたからだろうと、知っていた。

* * *

「部屋は、気に入ってもらえたかな」
不敬なほどに大きく壮麗な銅雀台からほど近く、その館は建っていた。表立っては先の戦で戦功を挙げた諸葛孔明への褒美であり、有り体に言ってしまえば孟徳の別邸であるその館は、花と一人の雇い女で切り盛りが出来る程度の小さな館で、その質素さは好みだった。
内装もまた、質こそ最高のもので揃えられているが、華美な装飾は施されておらず、智謀の軍師の館として相応しい、落ち着いた雰囲気を漂わせている。
その館の最奥にある寝室は、広い床があるだけの部屋だった。館の真の主人を迎え入れた花は、孟徳上着を受け取って皺にならぬよう畳み置いてから、孟徳が座る寝台へと、同じように腰掛けた。上掛けに焚き染められた香がふわりと広がる。
「はい。……なにからなにまで、ありがとうございます」
降将である花に、許都での生活基盤は存在しない。寵で買ったと言われるのだろうか、と少し思って、そのとおりだと笑ってしまいそうになった。確かに花は、曹孟徳の軍師であり、同時に寵姫になろうとしていた。
「感謝されることじゃないさ。当然の権利だと思ってくれて構わない」
孟徳はなんでもないことのように言って笑い、ごく手馴れた動作で、花の身体を抱き寄せた。女好きで名高い丞相らしい、抵抗の隙を与えないくせに、乱暴ではありえない所作。
「そしてこれを――義務だと思う必要はないよ」
孟徳は顔を近づけ、悪戯めいて笑って言った。顔に血が集まるのを感じて、それでも顔を逸らすことが出来ない。いい年をした女がうろたえる様な事ではないとわかっていても、身体は思うようにならなかった。
曹孟徳の人生に触れる、という願いは、ここまで過分なものではなかった。
それは別に、諸葛孔明として、で、構わなかったはずなのだ。少なくとも、最初は。
しかし今では、希みは不相応に膨れ上がって、花の手には負えなくなってしまっていた。義務だなどと、笑ってしまうような言葉だった。今の花なら、それが例え一夜の寵愛であっても、自ら希ってしまったかもしれない。
認めることは容易かった。つまりは、恋をしたのだ、と。孟徳の心に触れたそのときに、その寂しさに、その孤独に、どうしようもなく捕らえられたのだと。
「……意地悪な事を、言わないで下さい」
長い孔明としての所作が滲み出て、余裕を装うことだけは出来た。声は掠れて、頬は染まっているけれど。
「私の希みを、知っている癖に」
装えたのは所作と口調だけで、何を言っているのかはもう、自分でも良くわかってはいなかった。孟徳は花の背を優しく撫でるようにしながら、こちらは恐らく本当に余裕で、ゆっくりと首を傾けた。
「それは、俺に自惚れろってことかな」
駆け引きのような、言葉遊びのような。普段なら息をするようにこなせることが、今この場では、耐え難いことに思えた。だってこんなに心臓が煩くて、だってこんなに身体が熱くて。
縋るように、孟徳の衣を掴んでいた。もう、顔を晒していることも、目を見ていることも、耐えられない。俯くというよりは、近すぎる距離のせいで、孟徳の胸に顔を寄せるような形になりながら、首を振る。
「ん? ……違うのかな。どうしたの、花」
子供のような所作に、孟徳が笑う。宥めるように頭を撫でられても、既に思考は熱暴走を起こして崩壊している。孟徳が余りに余裕で、もういっそ泣きたいような気分にもなった。
こんな花を知ったら、孟徳は笑うだろうか。呆れるかもしれない。
「孟徳、さん」
もうなにも、話せる気がしなかった。会話なんて、要らないと思っていた。愛の言葉を交わした後の夜に、どんな言葉が要るというのだろう。必要だと言われても、なにも出てくる気がしなかった。
だから、言葉など、要らない状況に持ち込むしかなかった。なに、と甘い声が囁くのにあわせて、孟徳の身体に抱きついた。腕に力を込めて、唇で首筋を辿る。孟徳が少し驚いたように動きを止めて、それからすぐに、二人の身体は柔らかな寝台へ沈んでいた。
「随分、……せっかちだね?」
口付けの。優しく触れるようなものではない、何かを奪うような、そして与えるような、深い口付けの合間に、孟徳が囁いた。取り縋る腕に力を込める花に、答えるような余裕は無い。
拙くはないか、なにか違えてはいないか、そればかりが、気になって。
「ふ、……っ、ん……」
上手く息も出来ない。それでなくても、呼吸は整わない。心音はもう、響き渡っているのではないかと思うほどに煩い。きつく目を閉じて、孟徳の唇を上手く受け入れようと、そればかりに必死で。
孟徳の手が、宥めるように頬を撫でる。もう片腕は、夜着の簡素な帯へと伸びて、するりと器用に結び目を解いた。手馴れすぎているくらいに、簡単に。
どうすればいいのだろう、こちらも孟徳の着物を脱がせればいいのか。思っても、言うことをきかない腕は強く、孟徳の背の着物を掴んだままだ。こんなに必死ではいけないと思うのに、どうにもならない。
「……、そんなに掴んだら、動きづらいんだけどな」
唇を離して、からかう様に孟徳が言う。言葉とは全く整合しない動きで、花の着物の帯は解かれてしまっているのに。少しも離れたくないの、と言うのに、ろくに考えもせずに頷いた。熱に浮かされたように、ぼんやりとしている。孟徳は少し顔を離して、花の顔を見た。
見られてはいけないと、思っていた。だから強く、抱いていたのに。
果たして孟徳は、少し、驚いたように息を飲んだ。見られてしまった、と、思う。
余裕の欠片も無く、口付けに浮かされた――生娘そのままの反応をした、情けない顔を、見られてしまった。
けれど孟徳は何も言わず、先程より少し乱暴に、噛み付くように唇を重ねた。先のそれは手加減されていたのだとわかる深さの口付けの合間に、少し急いたような所作に反する甘い声で、「優しくするから」と囁かれたことだけ、もう、確かな思考で留めておけたのは、その言葉だけだった。

* * *

確かに男は、過分なほどに優しかった。
過ぎて痛みの中で思い返せば、何もかもが過剰な触れ方が、彼が気付いていたことを明確に示していた。起き上がることも出来ずに覚醒と眠りの間をたゆたっていると、唇につめたい唇が触れるのを感じた。
そっと開いて招き入れると、温い水が喉を滑り降りていくのを感じた。そうしてから、喉の渇きを思い出す。見上げた先で孟徳が水差しの水を入れた杯を掲げていて、どうにか体を起こす。
杯を受け取ろうと伸ばした腕は優しく下ろさせられて、孟徳が口元まで運んでくれた杯から、水を飲んだ。甘やかされている、と思う。労わられている、とも。
「あ、……ありがとう、ございます」
声が出ない。どうにか出たのは、ささやきよりは少しマシ、という程度の音だった。孟徳は少し笑って、杯を寝台の脇の卓に置き、花の身体を抱き寄せた。
「……すみません」
孟徳が何も言わないから、つい、言ってしまったようなものだった。孟徳が首を傾げる。疑問をあらわす所作でありながら、その目は全てを承知しているように見えた。花は孟徳に抱かれるままに、その胸に背を預けて、声の出ない喉からどうにか言葉を搾り出す。
「驚き、ましたよね」
「……ん、まぁそりゃあ、少しはね」
男は優しく花の髪を撫でながら、笑った。花は重たい脚を動かして、膝をかかえるようにする。花は言い訳だ、と思いながら、口を開いた。
「諸葛孔明は。……本物の諸葛孔明は、男なんです。だから、私は、普通に生きていたら、男性とそうなる機会なんてなくて」
言ってから、この言い方は不味いと気がついた。男は楽しげに笑みを深めて、首を傾げた。
「そう言われると、奇妙な期待をしてしまうけど」
「奇妙も何も、もう、お伝えしているでしょう」
初恋だ、と。
流石に繰り返すには恥ずかしい台詞は言外に含ませて、花は不貞腐れたように顔を背けた。
「……ああ、そういえば。あの時君は、面白いことを言っていたね。……『天女を落とす方法』」
思い出したのか、笑みを何処かだらしないものへと緩ませながら、孟徳が言う。言いましたけど、と低く掠れた声で頷いた花の前で、男は花を抱き寄せたまま、言った。
「古来から一つ、と言っていたけど。……これもまた、高名な方法じゃないかな?」
言いながら、そっと花の身体を引き倒す。へ、と間抜けな顔を晒す花に上機嫌な笑みを向けながら、孟徳の手は優しく花の首筋を撫でた。
「ちょ、待ってください、鬼ですか貴方は」
「なんで? ……優しくしたでしょ」
「……明日は勿論、お休みを頂けますよね」
諦めて言うと、孟徳は頷く代わりに花の唇に唇を落とした。力の入らない手をどうにか孟徳の背に回して、目を閉じる。
「嬉しかったんだよ、俺は。……あまりにも全てを、君が捧げてくれるからさ」
「そんなつもりは、なかったんですが……っ」
本当に。そんなつもりはどこにもなくて、どうしようもなく幸福に、そうなってしまった。
「そんなつもりが、君に無くても。……あんまり可愛くて、あんまり綺麗だから。……はやく汚して落としてしまわないと、心配でならないんだよ」
「御戯れ、を……っ、……んっ」
「戯れなんかじゃないんだけどな、……寝ちゃ駄目だよー」
「眠れないようなことをしている方が何を言うんですか!」
孟徳が笑う。擽るように触れられて、花も笑ってしまう。
夜に包まれる。夜はもう、怖いものではなくなっていた。














(肝心の部分を書かなかったせいで、色々ネタがぼやけてしまった……)
(サイト作ったら、中も書くかもしれないし、書かないかもしれない。)
(処女厨乙と言ってくれてかまわないのだよ!)

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