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姫金魚草

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悪趣味な (文若)

文化の日は文花の日だと聞いてなんか書こうと思って考えたけどまとまらなかったネタが、結局いつまでたってもまとまらないので晒してみるテスト。

花が戻ってこない。
孟徳のもとへ使いに出してからもう一刻が過ぎている。要件はただ書簡を渡すだけのことで、時間のかかるような議題でもない。すぐに戻ってくるだろうと踏んでいた彼女が戻ってこない理由を、文若はひとつしか思い浮かべることが出来なかった。
つまり、孟徳があの手この手で引きとめているのだ。
花は職務熱心で、真面目だ。彼女を引き止めることは容易くないが、なんといっても相手は一国の丞相である。すげなく振り払うことは難しいし、珍しい菓子などをちらつかせているのかもしれない。実際孟徳がそうして花を引き止めることは珍しいことではなく、それでも花は大概すぐに戻ってきていた。生真面目なところのある彼女にとって、「仕事中」と言う言葉は絶対なのだ。
彼女の国では、公私を比較的明確に分ける習慣があったというから、そのせいかもしれない。逆に孟徳などは、すべてが公で同時に私であるようなものだから、日中の休憩も厭わないし、逆に日付が変わるまで丞相府にいることも珍しくない。
とかく。
文若は手元の、たった今書きあがたばかりの書簡に目を落とした。先程花に届けさせた書簡の追記分だ。出ていかせてから不足に気付いて、慌てて書き上げたそれ。
つまり丞相に届けるべきもので――現状それは、この上のない言い訳となる。
(言い訳? 違う。仕事だ)
文若は書簡の墨が乾いたのを確認すると、手早くそれを巻いて立ち上がった。
花のことは関係ない。ただ使いが戻ってこないから、仕方なく手ずから丞相のもとに書簡を持っていこうという、それだけの話だ。そう、それだけの。
別にそのあたりの衛士にでも申し付ければいいことだ――と言う選択肢をあえて無視して、文若は自然早くなる足もそのままに、孟徳の政務室へと急いだのだった。


「文若様?」
「先程花に申し付けた書簡に不備があってな。丞相は中におられるか?」
政務室前の衛士に問うと、衛士は一瞬困ったような顔をしてから、頷いた。その表情の変化だけで、花がまだ政務室から出てきていないことも知れようというものだ。文若はため息をついた。
「では、入らせてもらうぞ」
「はい。――丞相、文若様です」
衛士が中に向けて声を上げ、ほんの少しの間の後に中から諾の声が変える。
なんだその間は。文若は僅かに眉を吊り上げるが、扉が開かれ中に通されたころには、すっかりいつもの表情を作ることに成功していた。
「失礼します、丞相」
「ああ。――花ちゃん、君のうるさい保護者が来ちゃったみたいだよ」
孟徳は大げさに嘆くような所作で言って、孟徳の政務机のそばで、何やら熱心に書簡を眺めている花の肩に、撫でるように触れた。
僅かに、文若の眉がひきつる。気づいたのか気づかないのか、孟徳は繰り返し、何やら妙に甘い声で「花ちゃん、」と呼んだ。
「え、――あ、文若さん!」
花ははっとしたように孟徳を見、それから、やっと気づいて文若を見た。
孟徳の手は、花の肩に添えられたままだ。
文若はそこから視線を離せないままに、僅かに眉を寄せて言った。
「先程の書簡に不足があってな。だが、お前がいつまでたっても戻ってこないものだから」
「ご、ごめんなさい」
「丞相。曲がりなりにも私の部下です、お戯れで引き止めないでいただけますか」
花の謝罪にも、文若の不機嫌は晴れない。何をしていたか知らないが、とかく花と孟徳は一刻程二人きりでいたわけなのだ。別に珍しいことでもない、と、言われてしまえばそれまでだが、なぜか無性に癇に障る。
花の言葉を聞かず言葉の矛先を孟徳へと向けた文若に、孟徳は少し面白そうに眉を上げた。
「戯れで、ねぇ? お前、俺と花ちゃんが二人でさぼってたと言いたいわけだ?」
「丞相が花を引き止めて、仕事以外のことをなさっていた可能性はあるかと思っております」
「……」
孟徳はわずかに目を眇めた。
「俺が悪いと」
「端的にいえば」
「悲しいなぁ。花ちゃん、この主への信頼の足りない男になにか言ってやってよ」
「え」
「仕事以外のことをなさっていた、ね。妻への信頼も足りないんじゃないかなぁ」
「……え?」
「! 丞相、そのような意味で言ったわけでは」
「そのような? さて、どんな意味かなー」
「……!」
文若は漸く、孟徳があまりに悠々としすぎていることに気が付いた。いまだ花の肩に触れている孟徳の手からどうにか意識を引きはがして、執務机に広がっているものに目を向ける。
「漢中ですね。軍議なら、文和なりも呼べばよろしいのに」
文若の静かな言葉に、孟徳はネタが割れたと言いたげに肩を竦めた。
「ちょっと思いつきを話してただけだよ。花ちゃんが思いのほか面白いことを言うから、長引いちゃった」
「私は、そんな」
孟徳は言いながら、まるでかわいがる風情で花の頭を撫でる。花は困ったように顔を上げるが、主君を振り払うこともできずにうろうろと手を彷徨わせるばかりだ。
「なんにせよ、俺たちはちゃーんとお仕事をしてたってこと。まったく、悋気な夫は嫌われるぞー」
「ほう。ちゃんと、ですか」
花の髪が。孟徳の手に遊ばれてさらさらと揺れる。花はすっかり固まってしまって、助けを求めるように文若を見た。
一つ、ため息をついた。
「悪趣味ですよ、丞相。――私が来るまで、触れようという気も起きなかったのでしょうに」
「……ほんと、つまんない男だなぁ」
孟徳はわずかに肩を竦めて、花の髪から手を離した。花はほっとしたように息を吐いて、たたたと小走りで文若のそばにやってくる。そして文若を見上げて、少し眉を下げた顔で言った。
「ごめんなさい、つい夢中になってしまって」
「いや」
文若は短く言って、先程孟徳がしたのと同じように、そっと花の頭を撫でた。花は安堵したように頬を緩める。
漢中の話。花はまだ、孟徳の軽口や接触を受けながらそんな話をできるほどに世慣れてはいない。これからも、慣れてほしくないと思う。とかく、孟徳は、花に触れることそれ自体を、目的にしていたわけではないのだ。
文若は改めて、孟徳を見た。執務机に寄り掛かった孟徳は、二人の様子をどこか嬉しそうに細めた目で見ている。
「まったく、ほんとうに貴方は悪趣味です。――試すようなことばかり」
「性分だから仕方がないだろ」
孟徳は笑う。つきあってられないと軽く額を押さえて、文若は花の肩に手を置いた。そのまま、退室を促しつつ踵を返す。花はおとなしく文若に添って、孟徳から背を向ける。
「――文若」
低く、かけられた声は笑っていた。どうしてもこらえきれないと言いたげに。文若は渋々振り向く。
くつくつと、漏らす笑いを抑えきれぬと言いたげに、孟徳はひどく楽しそうな顔をして、言った。


「で、その追加の書簡とやらはくれないのか?」











(なんだかんだいっても動揺しちゃうよねーな文若さん。)
(文花ENDだけど花ちゃん働いてるよな妄想。)
(孟徳にエドガー分が入り込んできているような……)

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