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姫金魚草

三国恋戦記中心、三国志関連二次創作サイト

   

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お菓子を君と (孟徳)

(はっぴーはろうぃん?)

「これ、文若のとこに届けたら、花ちゃんは先に帰りなよ」
孟徳は花の手に書簡を渡しながら言って、花はその言葉にやっと外を見た。
「あ、もう暗いんですね」
うっかりしてました。花の呟きに男は苦笑する。
「ちゃんと護衛と一緒に帰るんだよ。夜は物騒だ」
「はい。……孟徳さんは」
「んー、俺はちょっと何時帰れるかわかんないなぁ。先に寝てていいから」
積まれた書簡の山をちらと見ながらの言葉に、花は顔をしかめた。
「待ってます」
「え。だめだよ、先に」
「待ってますから、ちゃんと、帰ってきてくださいね」
花は繰り返して、まっすぐに孟徳の顔を見た。孟徳はぱちりと目を瞬いて、ん、と、くすぐったそうな顔で笑う。
「わかった。ちゃんと帰るよ」

* * *

孟徳は働きすぎだと花は思う。
もちろん、そうしなければならないだけの仕事が、たしかに孟徳には存在する。それはこの国でただ一人、孟徳にしかできない仕事で、仕方がないことだとは思っている。
けれど、近頃の孟徳は、疲れているように見える。
年なのかなと笑うけれど、それもあるかもしれないけれど、恐らく夢見が悪いのだと知っている。
(……卓、……孟卓……)
孟徳は時折うなされる。つぶやかれる名を、花は知らない。けれど恐らく、と、思っている。

恐らく。
孟徳は夢を、見ているのだ。
自分を裏切った男の夢を。
自分が殺した、男の夢を。

* * *

孟徳が帰ったのは、夜もだいぶ更けての頃だった。
「なにか召し上がりますか?」
「んー、いいや。ありがと」
孟徳は笑ったが、やはりその顔はすこし、疲れているように見えた。身体を流してくる、と孟徳は身をひるがえして、花は寝台を整えなおし、先に布団の中にもぐりこむ。
こうしておけば、孟徳が戻ってきたときに、寝台はちょうどよく温かいだろう。
本来であれば、寝室は別が普通なのだという。けれど孟徳は頑として、花の寝室を分けることを認めなかった。
「あれ、先に寝ちゃった?」
「起きてますよー」
戻ってきた孟徳に、ぽふぽふと布団の隣を叩いて示す。孟徳はするりと花の隣に滑り込んできて、ぬいぐるみでも抱くように花を腕の中に抱え込んだ。
「あったかい」
「あたためておきました!」
「えらいえらい」
花が自慢げにいうと、孟徳はよしよしと花の頭を撫でた。そうして二人で温まる中で、花は口を開く。
「私の国の、この時期のお祭りに、ハロウィンっていうのがあるんですけど」
「はろ、はろう……なんだって?」
異国人にはよくわからない響きかもしれない。ハロウィン、と花は繰り返して、孟徳の胸元に温まりながら言葉をついだ。
「その時期は、わるいものがたくさんあらわれるんです」
「わるいもの? おまつりなのに?」
「はい。お化けの類が」
「おばけ、」
鬼の類かと孟徳は言って、花は首を傾けた。花にとって鬼と言えば、角に虎柄をまとった大男だ。
「鬼は……ちょっと違うかもしれません」
「え、でもお化けって、死霊の類だって前言ってなかったっけ」
「? 鬼は死霊の類ですか?」
「……同じ言葉でも違うものだねぇ」
孟徳は楽しげに言って、まぁ先を続けてよ、と、乞うように花の頬に頬を擦り付けた。
「で、お化けは言うんです。『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!』って」
「おばけは、お菓子が好きなんだ?」
「はい」
「で、実際はどういうことをするお祭りなの」
お化けなんて、実際に出てくるわけがない。
だからそんなことを言われるはずがないし、それではお祭りは成立しない。
「子供が、お化けに扮して近所の家を回るんですよ」
「なるほど。で、子供におかしをあげるお祭りか」
「はい」
「いいねぇ」
孟徳は笑った。孟徳はこういう、平和で温かい話が好きだ。花の国のほのぼのとした風習を聞くたび、心底嬉しそうな顔をする。
「元々は異国のお祭りなんです。だから、謂れとかは詳しくないんですけど」
「異国のお祭りを、自国の習慣にしちゃうんだ」
「はい。私の国は、お祭り好きなんです」
「楽しそうだね」
花は孟徳を見て目を眇める。
「元々は。本当になにか、怖いものが出ると思われていて、それを追い払うためのお菓子だったのかもしれませんね」
「……」
「思い出したら懐かしくて。孟徳さんが帰ってくるまでの間に、お菓子を焼いたんです」
戸棚の中です。花は言って、笑った。
「明日、おやつに食べましょうね」
「……ん」
そうだね。文若に茶を淹れさせよう。
孟徳は花の耳にささやいて、ぎゅうと花の顔を抱き込んだ。ほどよくぬくまった寝台の中は、そろそろ眠気に侵され始めている。
「おやすみなさい」
花がささやく。孟徳の背を優しくなでて。
いい夢を、とは。
心の中でささやくだけに、留めておくことにした。


* * *

孟徳はいつもの夢にいる。
昔の親友の姿を見つける。不思議と彼は、何をしゃべるでもなく孟徳を見るのだ。
恨むでもなく、謝るでもなく。
孟徳は、笑う。
今までは、恐れて、恨んで、呪って、憤って、悲しんで、謝って、縋って――そんなことしかできなかったけれど。

「お菓子を食べよう。お前、甘いものが、好きだっただろう?」


* * *

「……丞相。その茶葉は甘い香りをつけた西方のとても珍しいもので」
「おかわりー」
「丞相、私の話を」
「聞いてない。おかわりー」
唐突に呼びつけられてとっておきの茶葉を出させられた文若の機嫌はすこぶる悪い。
そもそもその茶葉は花が政務の途中に話していた彼女の国の「紅茶」というものに近いような気がしていて、だから彼女が喜ぶのではないかと、こっそり文若が出すのを楽しみにしていた品だ。誰にも言っていないはずのこの茶葉の存在を、どうしてこの男が知っている。
「めったに金を使わないお前が、嗜好品を買ったら目立つだろ」
「……私は何も言っておりませんが」
「顔に書いてある」
孟徳はにやにやと笑って、文若がため息交じりに入れた二杯目に至極幸せそうに口を付けた。
この男、飲めればなんでもいいと思っているくせに、舌はいいから困りものだ。きちんと味は分かっている。
「ごめんなさい、文若さん。お仕事が残っているのに」
「いや。ちょうど休憩を入れようと思っていたところだ。……私の休憩にはなっていないが」
「みみっちいこと言うなよ。花ちゃんお手製のお菓子をお前にも分けてやってることに感謝してほしいくらいなのに」
「別に私は欲しいなど、」
「え、お前せっかく花ちゃんが作ってくれたものをいらないとか言うの」
この上司まじめんどくさい。
「え、と……ごめんなさい、あんまりおいしくできなかったかも」
「お前もいちいちひっかかるな。悪いのはすべて丞相だし、この菓子はよく出来ている」
「……文若、なんか最近花ちゃんへの態度が違うよねぇ?」
「仕事の邪魔をする上司よりかわいらしい部下の味方をするのはごく普通かと?」
「あ、わ、わたし、お湯のおかわり貰ってきますねっ!」
花は逃げるように立ち上がり、給仕場へと走って行ってしまった。
何が悲しくて上司と顔を突き合わせて茶を飲まねばならないのか……。
文若はひとつため息をついて、それから、孟徳へと視線を向け、話題を変える。
「今日は顔色がよさそうで、なによりです。花の菓子の効用ですか」
「うん、そうだね」
「そうですか」
気取られないように、息を吐く。孟徳がここのところ、僅かに疲れた顔をしているのには気づいていた。
菓子の効用、というけれど、それだけではないのだろう。文若は孟徳に関しての、花そのものの効用とでもいうべきものに、全幅の信頼を置いている。
まぁ、倒れられても困るし、元気になったのなら茶葉くらいは仕方があるまい。
いろいろと諦めて文若がそう思ったところで、孟徳がふと目を眇めた。
「ところで、文若」
「はい?」
「さっき、おまえ、『かわいらしい』とか、言ってたよな」
「……あ、あれは」
「そっかー、文若は俺の花ちゃんのことを『かわいらしい』とか思ってるのか」
「あの、丞相?」
「これは配置換えを考えないといけないなー。そんな危険な上司のところに花ちゃんをおいておくわけにはいかないもんなー」
「あれは部下として優秀という意味で、別に他意は」
絡み代として、茶葉の代金ぐらいは貰ってもいいのではないか……。
あっさりと前言を翻してそんなことを思った文若は、もう文若の言葉など聞く気のなさそうな孟徳に、何度目になるかもわからないため息をついたのだった。













(はろうぃん?)
(夢にでてきてるのはもちろん張邈さん。)
(はろうぃんについては調べてないのでいろいろすいません。あと文若オチ担当でほんとすいません。)

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