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姫金魚草

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唯一で無二の貴方へ(公瑾)

(公瑾GOOD後、CDネタは持ってないのでなかったことにしています/花嫁修業)




「……ごあいさつ?」
「そんな、日本語でおkみたいな顔しなくてもいいじゃないですか」
「メタな発言やめましょう……(ここって何語なんだろう?)じゃなくて、えーっと、誰にですか?」
「ベタなボケもやめましょうか」
にこにこといつもの顔で笑われると真意が読めない。
喬姉妹は私の前では大分表情が変わるというけれど、余り自覚出来ないのが残念なところだ。せいぜい、不機嫌な顔は多いかも、と思うくらいで。
でも、このあいだ呉に遊びに来た芙蓉姫からも、「花の前だとあの仮面がぼろぼろ剥がれて面白いわ」と言っていたから、事実なのは確かだろう。
(……今、わかりやすければいいのに)
恨めしく見上げても、公瑾の笑顔は変わらない。
花は精一杯眉を寄せた。
「か、身体が治りきってから、のほうが」
しどろもどろになってしまうのが悔しいけれど、緊張してしまうのは仕方が無い。
そう、喬姉妹に聞いたのだ。公瑾の家は、呉でも指折りの名家だと。
花自身はごく一般庶民の家に生まれた上、今はその家も無い身の上だと言っていい。身分的に釣り合うわけが無いのは当然のことながら、年齢的にも、十の開きがある二人だ。
「もう、治ったようなものですよ」
「……信用できません」
「おや」
前科がある身だ。公瑾は肩を竦めた。
「……ですが、……こちらにも事情というものがあるのです。協力してはいただけませんか」
(……あ、)
(……今は、わかった)
笑顔は変わらないように見えて――けれど確かに変わったのを、感じた。
ほんの僅かだけ笑みの色が薄れて、覗いたのは、真摯な眼差しだった。
「わかりました」
それだけで、どんな願いでも聞いてしまえる気がした。感情を悟らせない公瑾の、ほんの時折触れることの出来る生身の思いは、なんでもとても愛おしいと思う。
「ありがとうございます。……では、行きましょうか」
「え、すぐですか」
「はい。思い立ったが吉日、と、言うでしょう?」
「(……この時代にも、言うのかなぁ……)」


* * *


連れて行かれたのは、静かな丘のようなところだった。
長江を臨むその丘は、穏やで静謐な空気が漂っている。
「……ここ、は?」
「言ったでしょう。挨拶に行くと」
この丘が墓標だと気付くまでに、少しの時間が必要だった。
来る途中で詰んでいた花を静かに置いて、公瑾が目を閉じる。
美しいと、思った。
ふわりと風が待って、ざあ、と、草が音を立てる。
ここは、聖域なのだ。
隣に並んで、手を合わせる。ここに眠っているであろう人。孫伯符という人のことを、少し考えた。
呉にとって無二であった人。――周公瑾にとって、無二であった人。
私は彼のことを何も知らないけれど、呉の人々に残る彼の存在が、その偉大さを、その性質を教えてくれる。
花がゆっくりと目を開けても、公瑾いまだ、祈るように頭を垂れたままだった。
(――ああ、)
(この人を、幸せにしよう)
その思いは、湧きあがるように胸に起こり、そのまま溢れるようだった。
墓参に行くと言えなかったのは、彼の弱さだ。
一番弱い部分を晒すことを最後まで怖がる、彼の。

「……花?」
「、はい」
「どうしたのですか」
「?」

いつの間にかこちらを向いていた公瑾が、不思議そうな顔をする。
「泣きそうな顔を、していましたよ。……伯符のことを、考えていたんですか?」
否と答えることは、この場には相応しくない。
けれど、私は首を振った。
「……ならば、何を?」
「公瑾さんのことを」
「……、」
「公瑾さんを、幸せにしたい、って、……考えていました。ごめんなさい」
ざぁ、と。
もう一度、少し強い風が吹いた。公瑾は驚いたように眉を上げた。それから、困ったように笑う。
「何故、謝るのです」
「わからない、ですけど」
此処に眠る、強く、優しく、公瑾の唯一であったであろう人。
「伯符さんから、公瑾さんを、……奪ってしまうような気がしたからかもしれません。此処は、伯符さんと、公瑾さんのための場所なのに」
「……」
だから、ごめんなさい。
口に出すと、それは随分と重い、真実であるような気がした。泣いてはだめだと思うけれど、込み上げてくるものがある。
だって私が、思わなかったと、誰が言えるだろう。
あのとき、死に掛けたこの人の手を握って、連れて行かないでと願わなかったと、誰が――
「……そんな顔をさせるために、つれて来た訳ではありませんよ」
「ごめ、なさ」
「……やれやれ」
公瑾は溜息とともに、花の身体を抱き寄せた。
「こんなことまで先に言われてしまうとはね。……挨拶に来たと言ったでしょう」
「……」
「私にも、幸せにしたい人が出来たと――伯符以来の、大切な者が出来たと、そう言いにきたのですよ」
紹介しないと、祟られそうですからね。
最後は冗談めかして、公瑾はそう言葉を結んだ。
手が、自然と、縋りつくように公瑾の胸元を掴んでしまう。離さないように。離れないように。
「……!」
そのとき、光が射した。
光が丘を包み込む。柔らかな風が吹いて、二人の髪を擽るように揺らす。

「……笑われているような気がします」
「え?」
「時間がかかりすぎだと。心配を、掛け過ぎたかもしれません」

公瑾は穏やかな顔で、何時もの笑みよりも優しく、柔らかく、温かい顔で、微笑んだ。
胸元から手を離して、代わりに手を握った。誓うように。

――幸せにしたい。






「……嫁の方が男前だといわれたような気がします……」
「ず、随分具体的ですね」
「でもまぁ、私はどちらでも構いませんから」
「え?」
「幸せにしていただいても。私が貴女を幸せにすることさえ出来ればいいですから」
どうぞ、思う存分、私を幸せにしてください。
そう笑う公瑾はなんだか充分に幸せそうで、多分私も幸せそうに見えるのだろうと思ったら、願いなんて何でも簡単に叶う気がして、握る手にきゅっと力を込めた。







(今頃策は天国で大爆笑だよ! 「あいつのあんな緩んだ顔はじめて見た!(げらげら)」みたいな!)

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