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「光」(壊れやすい 後で雲長×芙蓉)

(無料配布にしようと思ってたもの。)


目覚めて最初に、痛みを思い出した。
体のあちこちで鈍く痛む、それが、死の痛みだと知っている。
けれどこれはただの記憶で、時が過ぎ去れば薄れて消える。そうして新しく始まるのだ。新たな本の主を迎えた、新たな世界での生が。
雲長はもうそれに、慣れきっているつもりだった。事実、幾度目とも知れぬ痛みを伴う目覚めにも、不快感以上の苦痛はない。もうすべてが摩耗して、どうでもよくなってしまっている。
――そのはず、だった。
体が、いつまで経っても重い。確かに久々に酷い死に方をしたような記憶があるけれど(いくつ剣が刺さったかも覚えていないのだ!)、痛いのは、体ではない部分だった。
ひどい、死に方を。
雲長は思わず頭を押さえた。
死ぬ間際の記憶が、蘇ったのだ。

花、と。

考えるよりも先に、言葉がこぼれた。
誰よりもいとしい、誰よりも大切な――同じ罪を背負っていたはずの少女の目の前で、雲長は、彼女を殺せずに死んだのだ。
そして彼女はもう、いない。雲長を置いていってしまった。もしかしたら、と、願うことさえ徒労だった。期待したところで、裏切られるのは分かっていた。
花と過ごした時間は、短くもないが、長くもない。そう思わなければやりきれなかった。これからまた無限に続く時間のほんの一握り。ただ誰よりも多いというだけのことだ。
だけ、と、言えぬことは分かっていた。
頭が痛んだ。忘れないように、と、思ったことがあった。花の姿を見て、曹孟徳の傍らを選んだ花の姿を見て、なにか、思ったことがあったような気がするのに。
けれど思いは、痛みと恨みにかき消された。
たしかに。
確かに雲長は、恨んでいた。蜀を裏切った花を。玄徳と翼徳を殺した花を。そしてなにより――雲長を、裏切った、花を。

* * *

 玄徳と出会うまでの日々は、消化するだけの日々と言っても過言ではない。ご多分に漏れず今回もそうで、玄徳と出会って彼についていくまでを決める一連の流れは、もう雲長の中では芝居めいていた。いくら繰り返しても色あせない出会い、なんてものが存在しないことを、雲長はよく知っていた。
「関雲長殿?」
 そうして、玄徳の幼馴染である芙蓉に出会うのもまた、お決まりの流れだ。しかし芙蓉は、初対面ではさすがに向けられたことのない、ひどく不快げなまなざしで雲長を見た。
「……義兄弟の契りを、結びなさった?」
 声は低く冷たく、時間を過ごせば普通となっていく芙蓉の口調は、けれど今この時を考えればひどく異常だ。初対面の芙蓉はいつも猫をかぶっているうえに、雲長のことをよく知るわけでもないから、粛々とした乙女の風情を見せることがほとんどだった。
「ああ。雲長は俺と同じ志を持ち、俺とともに歩んでくれると言った。俺も、雲長は誓いに足る男だと思った。――芙蓉は気に入らないか?」
 玄徳はきっぱりと言い、言いきられると面はゆいような気分になった。玄徳が認めてくれるものは、雲長のものであって雲長のものではない。それを悲しいとか苦しいとか思う気持ちも、党の昔に摩耗してしまってはいるが。
「ええ。気に入りません」
 芙蓉は、こちらが驚くほどにはっきりと言って、秀麗な眉をゆがめた。わずかに目を見開く雲長の顔をまっすぐに見据えて、言う。
「だって、暗い目をしているんですもの。未来を見る目とは思えない。――その志が本当かどうか」
「芙蓉! なんてことを」
「――いえ」
 殴りつけられたような。
 叩きつけられるような。
 そういう、圧倒的ななにかがその言葉にはあって、雲長は玄徳の声を遮ってしばし、口を閉ざした。
「……雲長?」
 ――芙蓉の、強いまなざし。雲長をまっすぐに見るその目は、どうしてこんなにも的確に雲長を見透かすのだろう。
 思えば。
 『関雲長』と、雲長で――接する態度がああも露骨に変わっていくのは、どの生においても、芙蓉一人であったのだ。
「玄徳殿。……いえ、玄徳兄。芙蓉姫のおっしゃることは、間違ってはおりません。俺は確かに――恨みに身をやつしていた」
 前の生での裏切りを恨み、それ以上に、いつだって、繰り返すだけの我が身を恨んでいた。
 それをおそらく、いつだって――目の前の、彼女だけが気づいていたのだ。
 雲長は知らず、口元に笑みを浮かべた。
 何かが蘇る。忘れていた何かが。
 忘れないようにと願った、何かが。

「ですが今――芙蓉姫の言葉で、目が覚めました」

 芙蓉は訝しげに、その整った顔をゆがめた。
 光だ。
 あの時雲長が見た光は――たしかにこんな、こんな色をしていた。芙蓉を見て、目を細める。まぶしいのだ。
 
 気づかなかった。
 彼女がこんなにもまっすぐに、自分を見ていたこと。

「なっ、……べっ、別に、そんなつもりで言ったわけじゃ」
 まぶしいのに目を離せなくてじっと見つめていたら、不意に芙蓉が乱暴な口調で吐き捨てて、顔をそらす。どんなつもりだ。きょとんとする雲長と、なぜか顔を赤らめる芙蓉を、玄徳一人が何か満足げに見る。
「まぁ、どうやら芙蓉も認めてくれたようだ。これから、よろしく頼むな」
「はい。芙蓉姫も、よろしくお願いします」
 頭を下げると、芙蓉姫は一瞬何か言いたげに口を開いた。けれど結局何も言わずに、どこかわざとらしく引きしめた顔で、小さくうなずいたのだった。








(ほんものの関羽を芙蓉が嫌ってるとは思えないので、
 芙蓉が嫌ってるのは「雲長」だよなぁとずっと思っていて、
 なのでこの二人はふつーにくっつくと思っていました。お似合いじゃん?)

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