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姫金魚草

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帝を巡る冒険(Sample)

**献帝の本です。
**というか、献帝と、孟徳と花ちゃんの娘(という設定に勝手にした)曹節の話です。
**捏造設定しか存在しておりません。
**仲達(司馬懿)は出てきません。子桓(曹丕)は出てきます。
**まるで関係ないですが、個人的には曹丕と司馬懿はよい主従だったと妄想、いえ想像しております。
 歴史上はまぁ、あんなことになっちゃうわけですけど、それは曹丕のあずかり知るとことではないですからね。

幕が上がるまでの話
 ~献帝あるいは劉伯和という少年のこと

「お前が妻を殺したのであろう」
 伯和が言うと、孟徳は僅かに眉を寄せた。事実であるからして、何も言うことが出来ないのだ。伯和は笑った。
「そんな顔をするな。別に責めているわけではない」
 本心だった。伏寿と言う皇后だった女を、愛していなかったというわけではない。ただ、仕方がないと言うだけのことだった。寿の父親は謀反を起こした。伯和はなにも望みはしなかったのに。
「しかし、朕とて傷ついていないというわけでもないのだ。しばらく、皇后を立てるなど考えずともよかろう」
 こういう言い方をすれば、孟徳はなにも伯和に無理強いできはしないのだった。無用な罪悪感は、今でも孟徳の中に根強い。
 幼い時はともかく、伯和はもう知っている。帝と言う飾りを背負った自分を、孟徳はほんとうは一度として、蔑ろにしはしなかった。
「……主上が、そうおっしゃるなら」
 孟徳は、しぶしぶと言う体を隠さずに言った。思わず、笑ってしまう。
「そんなに」
 自分たちは、こんな会話を交わすような主従ではなかった。そんな出会い方をしなかったし、恐らくは一つの奇跡がなければ、疎みあって終生を終えただろう。
「家族とは、よいものか?」
 こてん、と、子供のように、伯和は首を傾けた。
 伯和は家族と言うものを知らない。いや、伯和はもしかしたら、人と言うモノそのものを知らぬのかもしれない。何故なら伯和は、天の生き物であるのだから。
 用意された至高の頂。生まれたときから一人きりでそこに座っていた伯和である。伯和を巡って、多くの者が争い死んでいった。しかし、伯和と人めいた交わりを持った者はほとんどいない。
 孟徳は笑った。
伯和は、この男もこんな顔が出来るのだなと、僅かに驚いた。
「いいものですよ」
 ひどく、感じ入るような口調で、男は言った。なによりもね。付け足して、伯和が呆れそうになるくらいに緩んだ顔で、にこにこと笑う。
 奇跡は。
 ほんとうは、この男に舞い降りたものだと知っていた。伯和はその、あふれ出た恩恵を受けたに過ぎない。
「……家族、か」
 伯和はゆるりと呟いた。そうして、言う。
「ならば、はやくその家族の元に帰るがいい」
「言われずとも。……娘もだいぶ大きくなりましてね。そのうち、ご挨拶に伺いたいと、妻が」
「いつでも来ればいい。お前は抜きでな」
「ひどいなぁ」
 しばらく顔を見ていない。子供が生まれて以来、そちらにかかりきりだというのは、目の前の男が飽きることなく繰り返す愚痴だ。
 奇跡は、花と言う、一人の女の姿をしていた。



* * *




「泣く、とは?」
 献帝の言葉に、子桓はそろそろ進まぬ仕事にいら立ちを覚えながらも、答えた。
「言葉のとおりですよ。嫁に等行かぬと言って泣くのです」
「……それはまた、孟徳が喜びそうな、……いや、そうではないな。なにゆえに?」
「さぁ」
 子桓は空惚けて肩を竦めた。
「知りませんよ。――でもまぁ、嫁に行くのを拒む理由は、一つでしょう」
「ひとつ? 知らぬと言ったではないか」
「一般的に、の話ですよ」
 言ってから、この世で帝ほど一般的と言う言葉の似あわぬ存在も居るまい、と気づく。案の定不思議そうな顔をした帝は、それはなんだ、と尋ねてきた。
 そろそろ仕事に戻ってはくれぬだろうか。思いながら、子桓はごく軽く、答えた。
「それは勿論――他に、好いた男がいるからでしょう」
 ぱちり、と。
 献帝は、ひどくゆっくり目を瞬いた。
「……主上?」
 子桓は僅かに眉を寄せた。さして独創性のあることを言ったわけではない、と思ってから、もしかしたら、と、すこし愕然とした。
 もしかしたら。
「……そうか。そうか、それはそうだな。そういうものなのであろう」
 献帝は丁寧に噛み締めるような口調で言って、頷いた。
 もしかしたら。子桓は、ぞっとするような気分になった。それは奇しくも、子桓の父たる孟徳が、幼き献帝を前に感じた寒気と同種のものであった。
「好いた、か。なるほど、そういう思いも――そういう願いも、たしかに、あるのだろう」
 もしかしたら――この、子桓の手を焼かせるばかりの、子桓より十以上も年上の帝は、――帝は、帝と言う存在であるがゆえに、――知らぬのかもしれぬ。
 誰かを好くということを、知らぬのかもしれぬ。
 思えば妻を亡くして以来、先の会話でも出た通り、妃を持つことを拒み続けてきた理由も、もしかしたらそのあたりにあるのかもしれない。子桓は思わず口をつぐんで、政務の催促はしばらくやめとしよう、と、献帝から視線を逸らしたのであった。

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